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二次性高血圧症[私の治療]

No.5289 (2025年09月06日発行) P.38

野口雄司 (東北大学大学院医学系研究科腎臓内科学分野)

豊原敬文 (東北大学大学院医学系研究科腎臓内科学分野准教授)

田中哲洋 (東北大学大学院医学系研究科腎臓内科学分野教授)

登録日: 2025-09-09

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  • 高血圧症は日本では罹患者が最も多い疾患であるが,その中で原因疾患が背景にある二次性高血圧症が隠れている場合は少なくない。本態性高血圧症とは病態や治療方針が異なり,通常の降圧加療のみでは治療抵抗性高血圧症を呈することも多い。一方で,適切に診断すれば効果的に加療することが可能となり,心血管イベントや慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)などの進行を抑制し患者の予後を改善させることができるため,十分に認知しておく必要がある。まず疑いを持つことが診断の重要なポイントである。
    二次性高血圧症は,高血圧症と診断されている患者の10%程度と考えられており,内訳としては睡眠時無呼吸症候群,原発性アルドステロン症,腎血管性高血圧症,腎実質性高血圧症の頻度が高いとされている1)。褐色細胞腫,クッシング症候群などのホルモン異常も原因となることがある。その他,甲状腺機能異常や薬剤性なども原因となりうる。まずは二次性高血圧症を疑い,詳細な病歴聴取や身体診察,一般的な尿検査・血液検査でスクリーニングを行うことが重要である。精査には,内分泌ホルモン検査およびエコー検査,CT・MRI検査や123I-MIBGシンチグラフィーなどの画像検査が検討される。

    Ⅰ.腎実質性高血圧症

    ▶診断のポイント

    腎臓は体液量および血圧調整に重要な臓器であり,CKDでは塩分排泄障害に伴う体液量の増加,レニン-アンジオテンシン(RA)系亢進が関与し高血圧になることが多い2)。必ずしもCKDに伴い高血圧になるわけではないが,高血圧に先行した尿所見や腎機能低下を認めた場合には疑う根拠になる。糸球体型の血尿や0.5g/gCr以上の蛋白尿を認めた場合には精査を考慮し,専門機関への紹介を検討する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    腎実質性高血圧では特に食塩感受性が強く,減塩食が重要である。薬物治療としては,尿蛋白陽性例では腎保護をねらいアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)/アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を使用する。尿蛋白陰性例ではARB/ACE阻害薬のほかに,カルシウム拮抗薬(CCB)や利尿薬を第一選択とすることもできる。75歳以上の高齢者でCKD stage G4以降の場合はCCBが第一選択となる3)

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