編著: | 岩崎 聡(国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科 教授/聴覚・人工内耳センター長) |
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編著: | 神田幸彦(医療法人萌悠会耳鼻咽喉科 神田E・N・T医院 理事長・院長) |
判型: | A5判 |
頁数: | 168頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2025年03月15日 |
ISBN: | 978-4-7849-2509-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
●一側性難聴に対する人工内耳の国内外のエビデンス,適応基準,実際に必要な検査法とその解釈,電極の選択法などをまとめました。
●一側性難聴への人工内耳の取り扱いに関して,保険収載へ向けてどう対応すればいいか,人工聴覚器医療機関だけでなく突発性難聴やムンプス難聴など一側性難聴を取り扱う全国の一般耳鼻咽喉科医にもおすすめです。また,人工内耳前の補聴器や検査法についても言及しており,言語聴覚士,臨床検査技師,教育関係者,認定補聴器技能者はじめ補聴器業者の方々にもおすすめです。
●一側性難聴で困っている方々への朗報となる情報満載です,ぜひ本書をご活用ください。
1 両耳聴について 太田有美
2 一側性高度難聴に対する補聴方法について 神田幸彦,古賀 涼
3 一側性難聴のガイドラインについて 樫尾明憲
4 適応基準について 山崎博司
5 海外からの報告
5-1 人工内耳について 吉田忠雄
5-2 一側性高度難聴について 實川純人
6 方向感検査法について 石野岳志
6-1 裸耳における成績 石野岳志
6-2 補聴器による成績 小山田匠吾
6-3 人工内耳による成績:先進医療の成績 高橋優宏
6-4 防音室の影響について 石野岳志
7 雑音下語音検査法について 松田悠佑,東野哲也
7-1 正常コントロールと一側性難聴例による成績 松田悠佑
7-2 一側性難聴例における裸耳とCROS補聴器装用下における成績 松田悠佑
7-3 人工内耳による成績:先進医療の成績 高橋優宏
8 雑音下語音閾値検査法について 菅原一真
8-1 HINT(Hearing in Noise Test)について 佐藤 崇
8-2 補聴器による成績 小山田匠吾
8-3 人工内耳による成績:先進医療の成績 高橋優宏
9 一側性難聴に対するリハビリテーション方法
9-1 ダイレクト・インプット(DI)法を用いた聴覚リハビリテーション 松田悠佑
9-2 ダイレクト・インプット(DI)法の実際 松田悠佑
10 人工内耳の電極選択について 宇佐美真一,西尾信哉
11 聴神経腫瘍と人工内耳の効果について 大石直樹
12 非対称性難聴について 中西 啓
13 一側性高度感音難聴に対する人工内耳の臨床研究成果 鬼頭良輔
巻末資料
索 引
一側性難聴(片耳の難聴)は両側性難聴と比べて聞こえる耳による聞き取りが可能なため,日常生活での会話には不自由がないように一般的には思われがちである。確かに1対1での静かな場面での会話では問題ないようであるが, 雑音下や多人数での会話における話し掛け,視野に入らないところからの音の近づき(音源定位)などの環境下では難渋する場合があるとされている。しかし,一側性難聴は,両側性難聴に比べてその頻度は不明で,実際の不自由さについて詳細に検討されたことがないのが現状である。令和2~4年度に行われた日本医療研究開発機構(AMED)障害者対策総合研究開発事業感覚器障害分野「一側性聴覚障害者の障害程度評価と医療的,社会的支援方法の確立に関する研究」では,空間認識に困難が生じ聴取疲労を自覚し,多くが聞こえや日常生活に不安を感じているので,医学的介入と社会支援の拡充を進めていく必要性が示唆されている。さらに令和3~5年にかけて先進医療「一側性高度または重度感音難聴に対する人工内耳の有効性・安全性に関する研究」が実施され,人工内耳の手術前後における騒音条件下での語音弁別検査および方向定位検査及び自由音場閾値検査では,無治療ヒストリカルコントロールと比較して有意な改善が示された。また,本研究で一側性難聴の啓蒙のためのパンフレットを作製した。さらに令和6~8年には名古屋大学の吉田忠雄先生を代表者とするAMED「一側性聴覚障害の評価手法の標準化と社会参加を促進する手法に関する研究開発」が継続して実施されていく。
知ってほしい一側性難聴のこと(PDF:パンフレット)
[https://mita.iuhw.ac.jp/clinic/jibiinkouka/index.html]
(2025 年2 月5日閲覧)
一側性難聴症例に対する人工内耳治療の目的は両耳聴の実現であるが, 一般的に両耳聴の効果として知られる両耳加算効果(binaural summation), 両耳スケルチ効果(binaural squelch), 音源定位能(soundlocalization)に関しては,音の高さ,大きさ,タイミングの左右差が大きな要因であることが知られている。一側性難聴症例に対する人工内耳治療においては,両側性難聴に対する人工内耳の場合と異なり,一側の聴取が正常ないしは補聴器が利用できるレベルの聴力が残存しているため,良聴耳側で聴取する自然の音と,人工内耳を介して聴取する音の差を可能な限り小さくすることが,より良い両耳聴実現のために非常に重要である。そのため,一側性高度感音難聴に対する人工内耳に関しては,両側性高度感音難聴に対する人工内耳とは異なる補聴器の知識や騒音条件下の語音弁別検査および方向定位検査などの評価検査法の知識が必要となる。
本マニュアルは一側性高度感音難聴に対する人工内耳に関係する情報をまとめたものであり,適応基準の内容を詳細に説明している。医学的介入を希望される患者さんに対して活用していただければ幸甚の極みである。また,この分野は今後もさらに研究が進み,変化・進歩していく可能性があり,さらに詳細な検証が行われていくことを期待している。
わが国ではまだまだ実施経験や情報が少ない中でご執筆いただいた先生方に,心から感謝申し上げる。
2025年2月
編者を代表して
国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科 教授/聴覚・人工内耳センター長
岩崎 聡