診療科: | 耳鼻咽喉科 | 耳鼻咽喉科 |
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頭頸部外科 |
シリーズ: | よくわかる病態生理 シリーズ |
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第1章 耳(1)構造と機能
外耳・中耳の構造
内耳の構造
聴覚の受容と伝導路
平衡覚の受容と伝導路
平衡覚と眼球運動・姿勢制御
第2章 耳(2)難聴
聴覚検査
伝音難聴と感音難聴
迷路性難聴
中枢性難聴
第3章 耳(3)めまい
平衡機能検査
末梢性めまい
メニエール病
中枢性めまい
第4章 耳(4)その他の耳疾患
滲出性中耳炎
急性中耳炎
慢性穿孔性中耳炎
顔面神経麻痺
聴神経腫瘍
外耳道の異物
第5章 鼻
鼻腔・副鼻腔の構造と機能
嗅覚の受容と伝導路
嗅覚障害
鼻出血
鼻閉
アレルギー性鼻炎
副鼻腔炎
上顎癌
鼻腔の異物
第6章 口腔・咽頭・食道
口腔・咽頭・食道の構造と機能
開口障害
嚥下のメカニズム
嚥下障害
味覚の受容と伝導路
味覚障害,味覚検査
唾液腺疾患
咽頭炎・扁桃炎
扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍
扁桃病巣感染症
扁桃肥大
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
第7章 喉頭・気管
喉頭の構造と神経支配,機能
嗄声
喉頭の炎症,ポリープ
喉頭癌
反回神経麻痺
気道異物
気管切開
シリーズ刊行の言葉
最近のライフサイエンス研究の発展はめざましく、その成果が医学教育や医療に反映されている。また、医療の受益者たる国民のライフサイエンスや医療への理解も進展しており、国民の医療に対する満足度・要求度も質的変貌を遂げている。このような時代的背景が、医学生の学習行動に重大な影響を与えているのは、間違いない。
従来の医学教育では、講義で与えられた情報を鵜呑みにして、試験で吐き出すようなスタイルが一般的であった。その反省から最近では、問題発見・問題解決を学生が自ら行うPBL(Problem Based Learning)型の教育が普及してきている。その際、情報の丸暗記ではなく、その必要性・重要性を学生が自ら認識してこそ、PBL型の教育の利点が活かせよう。
本シリーズは、正常構造・機能とその対極にある疾病を有機的に結合して理解できる「病態生理」に主眼をおいている。すなわち、正常機能の維持・発現機構の破綻としての症状・徴候が出現するメカニズムを理解し、また同時に症状・徴候の発現の背景に正常構造・機能の破綻があることを双方向的に理解し、学習効果を高めることに力点がある。簡単に言えば、「なぜ?」ということを医学用語を用いて説明できるよう、編集している。学生から見れば、非常にまとまっているスタイルと内容と言えよう。
医学生諸君には、従来の学習行動(たとえば、言われたことだけ学習する)から脱却して、自発的に自己学習する姿勢に変わることが望まれる。その際、本書のような「病態生理」を中心とした教材を用いて学習すれば長期記憶に容易に入り、その結果、学生時代の臨床実習、さらには研修医・専門医として医療を実践する場でも学習の成果が思う存分に発揮できよう。また、学生にとってのメリットは、平成17年度から本格運用されている共用試験(CBT)のみならず、医師国家試験にも役立つことである。これらは学生諸君が、疾病の病態生理を充分に理解して、患者様にわかりやすく説明することができる良き医師になる方向を示している。
松尾 理
編集にあたって
この度、コアカリキュラムに対応した「よくわかる病態生理」シリーズ第14巻として、耳鼻咽喉疾患を編集しました。いうまでもなく本書は、学部教育における、全国医学生が卒業までに理解すべき到達目標を基準にしています。近年、医学知識は加速度的に増加しており、それらをすべて暗記し医療の現場で想起することは不可能なことです。したがって学部時代に求められるのは、問題解決型の習慣とそのための能力を養成することです。自らが問題提起し自分で解決・理解した知識は、いつまでも残るものです。それに対し、暗記で得られた知識は「必ず忘れるもの」です。問題に遭遇したときに、求める情報がどの教科書のどこを見れば得ることが出来るかをしっかり想起できることのほうが賢明です。本書は、そのようなときに役立つことをモットーにしました。
耳鼻咽喉科学は感覚器学ともいわれるように、複雑な構造と機能を理解し、しかも多岐にわたる病態を理解しなければなりません。このことは、学生にとっては必ずしも容易なことではありません。とかく暗記になりがちな領域に対して、病態と生理の理解に重点をおいた本書は、学部学生のみならず、将来医師として医療に携わる方すべてにとって有用な書であると考えています。
もちろん学部教育では、許される範囲内での医療の基本的手技を学ぶ必要はあります。全国医学校の多くは、そのためのカリキュラムとしてクリニカル・クラークシップを採用しています。このように最近の医学教育にあっては、コアカリキュラムの提案以来10年近くを経過し、各大学はそれぞれに工夫した特色ある教育を行っています。その点、まだ歴史の浅い医師初期臨床研修制度は大きな局面を迎えています。地域における医師不足、分野別医師不足などが社会問題となっています。全国で急速に展開され変革をとげた医学教育の現状を検証し、2年間の義務化について再検討する必要性を感じます。
2009年1月
古川 仭