著: | 加藤高明(誠江会田中医院院長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 224頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2009年05月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-4213-8 |
版数: | 第2版 |
付録: | - |
第2版では腹部臓器の配列軸に着目して、腹部解剖や発生過程を念頭に置いた応用力のある腹部画像読影力を身につけられるようさらに写真と図を増補しました。また、文字も大きくなり大変読みやすくなりました!頁増でも価格は据置!腹部画像を読影・理解しやすくする立体的カラーイラストつきで、あなたの「画像を読み解く力」がアップすること間違いなしです!
Chapter I 腹部解剖オリエンテーション
1. 臓器の軸(1)配列の法則─前額断における臓器軸を知る
2. 臓器の軸(2)腹腔─臓器を入れる空間の形態を知る
3. 臓器の軸(3)発生過程─水平断における臓器軸を知る
4. 臓器の軸(4)3D(立体)─2Dの臓器軸を3Dにする
5. 肝・胆道(1)
6. 肝・胆道(2)
7. 胃・十二指腸・膵臓(1)
8. 胃・十二指腸・膵臓(2)右側
9. 胃・十二指腸・膵臓(3)左側
10. 腎臓・脾臓
Chapter II 検査編
1. CT検査─正常像(1)
2. CT検査─正常像(2)門脈臍部より頭側の肝スライス面
3. CT検査─正常像(3)門脈臍部より尾側の肝スライス面
4. 腹部血管造影(1)肝
5. 腹部血管造影(2)膵
6. 腹部血管造影(3)胃
7. 腹部血管造影(4)腹部血管の発生1:大動脈とその分枝
8. 腹部血管造影(5)腹部血管の発生2:上腹部臓器の血管
9. 腹部血管造影(6)腹部血管の発生3:下腹部臓器の血管
10. 腹部血管造影(7)腹部臓器の発生
One Point Lesson
(1)網嚢の形成
(2)肝をいろいろな方向からみてみよう
Chapter III 疾患別腹部画像の見方
1. 腹膜炎(1)十二指腸潰瘍穿孔
2. 腹膜炎(2)膵炎・膵嚢胞
3. 腹膜炎(3)腹腔内膿瘍
4. 胃 癌(1)胃ポリープと早期胃癌
5. 胃 癌(2)進行胃癌
6. 膵 癌
7. 肝 癌(1)区域からみた画像診断
8. 肝 癌(2)門脈枝からみた画像診断
9. 肝 癌(3)尾状葉
10. 大腸癌
Chapter IV 腹部手術手技
1. 幽門側胃切除術
2. 胃全摘術
3. 膵頭十二指腸切除術
4. 胆嚢摘出術・総胆管切開載石術
5. 小腸切除術
6. 結腸切除術
7. 直腸手術
Chapter V 典型画像とその鑑別
1. CT・MRI像の読影
2. 血管造影像の読影
3. 腹膜炎疾患の画像
4. 膵疾患の画像
5. 胃疾患の画像
6. 胆管・膵管の画像
7. 肝疾患の画像
8. 大腸疾患の画像
9. 胆嚢疾患の画像
索 引
腹部画像の読影には解剖や疾患の知識を詳細に学ぶことが必要なことは言うまでもありません。しかし、その前に大きな見地から全体像を見通すことが大切です。そして、全体像を形づくる原則を理解することが重要です。
よく説明に使われるお話ですが、象の形態について触った複数の盲目の人に話を聞くと、尻尾を触った人、また胴体、耳、鼻とそれぞれを触った人の意見がまちまちで象がどのような形をしているかわかりませんでした。全体像を一目みれば簡単にわかることです。このことは形に限ったことではありません。
たとえば、私が2002年にLancetで述べた内容ですが、緑膿菌の抗菌薬に対する耐性株に遺伝子に変化がみられないものがありました。何らかのスイッチが入り遺伝子の機能に変化が生じたと考えています。おもしろいことに、他の機能が脱落することがあります。細菌のエネルギーにも限りがありますので、耐性化によって消費されるエネルギーを他の機能を捨て倹約しているものと考えます。エネルギーは有限であるということが原則です。さらに一歩進めると栄養の豊富な環境での耐性化、栄養の乏しい環境での耐性化などでは他機能の脱落程度が異なることが予想されます(まだ、実験はしていませんが間違いないでしょう)。つまり、このような変化をコントロールする原則事項を理解できれば細菌の変化を容易に予測することができます。また、他にもいろいろあります。急激な地球温暖化はすべての生物に何らかの変化を与えます。ウイルスの変異は人よりもはるかに速いので、この相違によって重症急性呼吸症候群(コロナウイルス)や新型鳥インフルエンザ(H5N1亜型ウイルス)などの脅威が生まれるわけです。環境の変化が生物に変化を与える、そして遺伝子が短いほど環境適応が速いということを理解していなければこの必然性を予測することはできません。このような原則事項は当たり前のことですが、知識を発展させるためには十分に理解しておく必要があります。
腹部臓器の形態や並び方も同様です。限られた空間に各臓器を整然と配置するにはどうしたらいいか?最も距離のとれる対角線上に臓器を配置すればよいわけです。そしてその対角線に直角に臓器を成長させれば体積を効率よく増大させることができます。このように、腹部臓器も簡単な原則事項によって規定されているのです。従来の腹部画像の書物にはこのような原則事項は書かれていません。
この原則事項を理解した上で、どのような腹部画像でも読影できる応用力を身につけて下さい。
なお、本書には、筆者の前著『3D Anatomy』より引用した図が掲載されているが、紙面が煩雑になるので出典は割愛した。
加藤高明