共有意思決定(shared decision making:SDM)支援は,複数ある意思決定支援方法の中のひとつであり,患者とケア専門職など2人以上の人が対等のパートナーとなり,互いの情報を共有しながら意思決定を行う支援方法である。
SDMは,国内では「共同意思決定」や「協働意思決定」と訳されることもあるが,これらは海外で発達したSDMの概念,手順とは必ずしも一致しない。
在宅医療におけるSDM支援は,すべての人は意思決定能力があることが推定される「能力推定の原則」のもと,家族も含めた多職種チームにより行う。
「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」1),「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」2)等において,本人の意思決定能力が低下した場合においても,本人の意思の尊重に基づいた意思決定支援を行うことが明記された。
基本原則として,すべての人は意思決定能力があることが推定される(能力推定の原則)。これらのガイドラインでの意思決定支援においては,SDMの考えが採用されている。
在宅医療においてはSDMの考えに基づく意思決定支援を行う。SDMの構成概念は次の9ステップである。①意思決定の必要性を認識する,②意思決定の過程において,両者が対等なパートナーだと認識する,③可能なすべての選択肢を平等に情報提供する,④選択肢のメリット・デメリットの情報を交換する,⑤医療者が患者の理解と期待を吟味する,⑥患者の価値観・意向・希望を確認する,⑦選択と意思決定に向けて話し合う,⑧意思決定を共有する,⑨フォローアップ,である。
この順番通りに実施する必要はないが,患者との対話の際は念頭に置き,従来のようなパターナリズムに陥らないよう,意思決定に患者自らが参加し,「一緒に決める」ことの意義を最初に説明する。
SDMではあらゆる利用可能な選択肢のメリット・デメリットを説明し,その際はできるだけエビデンスを用いた情報提供をする。リスクの高い医療行為の場合は,インフォームド・コンセントを得る。この場合も書式提示に頼らず,対話を進める中でできるだけ患者の価値観に基づいて意思を確認する。
患者の理解の把握については,teach back(患者自身から理解した内容を話してもらう)の手法が役立つこともある。
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