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レターセクションのライティング術 医師が最速でトップジャーナルに名前を載せる方法

一般臨床医でも医学生でも、トップジャーナル掲載は夢じゃない

定価:3,960円
(本体3,600円+税)

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著: 市堰 肇(ジャパンケアコンサルタンツCEO,米国内科学会上級会員)
判型: A5判
頁数: 256頁
装丁: 2色刷
発行日: 2025年02月14日
ISBN: 978-4-7849-6023-1
版数: 第1版
付録: 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます)

●矢野晴美先生(国際医療福祉大学医学部国際医療者教育学 教授・感染症学 教授)ご推薦!
●トップジャーナルのレターセクションにアクセプトされるための具体的ノウハウを伝授。
●「一度でいいからトップジャーナルに自分の名前を載せたい」を叶える1冊。
●医学生・医師・臨床医のアウトプットの場を広げます。
●著者自らの掲載例を示すとともに、多数の論文翻訳を手掛けてきた経験から、トップジャーナルにアクセプトされやすくなるコツ、国際標準のアカデミックライティングのノウハウを詰め込みました。

目次

1章 一般臨床医こそトップジャーナルを狙え
1.開業医・勤務医の皆さんへ
 コラム 何を書けばいいのかわからない!?
2.研修医・専攻医の皆さんへ
 コラム 医師のキャリアを左右する論文生産性

2章 医学生にもトップジャーナル掲載は可能だ
1.医学部における英語教育
2.医学生にとって資格試験を受ける意義とは
 コラム 一般的な英語力と実務能力の違い
3.英語は得意という皆さんへ
 コラム Occupational English Test(OET)
 コラム あなたにはメンターがいますか?
4.「英語はちょっと……」という皆さんへ
5.効率良く医学英語を学ぶ方法
 コラム NEJMのCase Recordsの活用
 コラム 講義は英語でやるべきか
 コラム 偶然をキャリアに活かせ!

3章 レターについて
1.レターに関する理解を深めよう
2.コモンレターの書き方
3.アンコモンレターの書き方
4.具体的なレター
5.レターライティングに効果的なステップ
 コラム 英語論文の書き方なんて習っていない?
 コラム 英語論文執筆の学習法
 コラム 論文アクセプトにコネは必要?

4章 アクセプトを遠ざける英語
1.日本人の英語
2.ノンネイティブの英語
3.投稿前の確認事項
4.Punctuationを究めよ!
 コラム 鳩山論文の教訓
 コラム 思ったより歴史があるアカデミックライティング

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序文

「一度でいいからトップジャーナルに自分の名前を載せたい」という人は大勢いらっしゃると思います。いま本書を手に取って下さっているあなたもそのうちの1人ではないでしょうか。トップジャーナルへの掲載を叶えるためのカギは,「優れた研究に従事し,洗練された英文で原著論文を書くこと」のように思っているかもしれませんが,それだけではなかなかうまくいきません。研究成果だけで勝負するには,そもそも競争率が高すぎるからです。

本書で提示するのは,原著論文や総説といった研究内容に関するものではありません。トップジャーナルのレターセクション(コレスポンデンスと呼ぶ医学誌もあります)にあなたの意見を発信するための執筆法です。すなわち,医学界にとって有益な提言,ユニークなアイディア,グローバルヘルス向上に向けた自分の考えを投稿してアクセプトを狙う英文ライティングの手法です。

日頃から基礎・臨床研究に携わっている人には自明のことですが,医学論文アクセプトのポイントは「新規性」にあります。しかし,研究分野によっては既にレッドオーシャンに突入しているとも言われており,研究テーマだけでトップジャーナル掲載を狙うのはきわめて厳しいというのが現状です。一方,アイディアは無限,ブルーオーシャンです。グローバルヘルス向上に有益な意見はトップジャーナルでも尊重されており,一気に視界が開けます。この分野においてわが国からの発信は非常に少ないというのが現状ですが, 研修医・医学生であっても本書で紹介する「Rad-See」(☞第3章3参照)を活用して有益な意見を説得力あるライティングで主張すれば,アクセプトのチャンスは十分あります。

後述の通り,本書は若い世代への贈り物のつもりで書いています。したがって,本書の主な対象は若手医師,研修医,医学生です。とはいえ,「研究には従事していないが,医学界には貢献したいし,医療をより良くするための提言がある」という方であれば,一般勤務医や開業医の先生方にもぜひ参考にして頂きたいと思います。

さて,レターというと「医学誌に掲載された他の研究者の論文への反論や補足」のように理解している方が多いのではないでしょうか。しかし,それはレターが持つ役割の一面にすぎません。
医学誌のレターには,より深い学術的意義があります。学術的というと,「何か特別な研究に携わっていないと投稿できないのではないか」と思う方がいるかもしれませんが,それは大きな間違いです。

本書を読むと,❶トップジャーナルのレターセクションは私たち一般臨床医のアウトプットの場になりうるということ,❷発信方法にはコモンレター(Common Letter)とアンコモンレター(Uncommon Letter)の2つの形式があるということ,❸アンコモンレターの場合,医学誌に掲載された論文とは無関係に自分の意見・考えを述べることができるということ,❹ライティングにはアクセプトの確率を高めるための「型」があるということがご理解頂けます。

ここまで読んで,「なぜレター?」「本書の著者は誰?」と思った方も多いと思います。そこで,私が本書を執筆しようと思った経緯について触れます。
コロナ禍のことでした。私の大切な家族が二度にわたって入院加療することになりました。一度目は骨折の手術,そして二度目はある難治性疾患の検査・治療のためです。緊急事態宣言が繰り返し発せられるご時世,家族の面会も厳しく制限されていました。そのような状況下,心の支えになってくれたのが,医療スタッフの皆さんでした。私より一回りも二回りも若い医師,そして看護師の皆さんに励まされる中,次の新しい時代を担う若い世代に何か恩返しはできないかと思うようになりました。

さて,若手医師,研修医,医学生に向けて,何か自分にできることがあるのだろうか,そう考えたときに1冊の本を思い出しました。私の愛読書の1つ,『修身教授録』(森 信三)です。これは教師養成機関である師範学校で記録された森氏の講義録で,昭和12〜13年当時のものです。その中にある「1つの目標」という節に,将来1冊の本を書く覚悟を持って学ぶことの大切さが記されています。「大学などで西洋の書物ばかり読んでいる学者先生なんかには,どうしたって書けないような書物を,1人の小学校教師としての立場から書くんです」と熱心に説き,実務家の立場から書物を残す意義を森氏は述べています。そこで,1人の小学校教師を1人の臨床医に読み替えて,自分にも何か書けることはないかと考えました。

私は医師のみならず,プロの翻訳者(日→英)としても活動しており,NHKで扱う国際放送や公文書のほか,医学論文の翻訳・校正にも従事しています。当初,医学英語,特に英語論文の書き方についてまとめようかと考えました。しかし,医学論文の書き方については,ご高名な先生方による優れた書籍が既に数多く出版されています。そこで,論文校正の仕事で得た知見,特にコアクリニカルジャーナルにアクセプトされやすい英文ライティングの構成・論理展開法に焦点を絞って書くことも考えました。
しかし,それでは読者対象が現役の研究者に絞られてしまい,若い世代への恩返しにはなりません。そこで,現在研究に従事していない若手医師,研修医,医学生,一般臨床医でも,国際医学界に意見を発信して頂けるよう,レターの書き方にテーマを絞ることにしたというのが本書執筆の理由です。

本書ではレターをコモンレターとアンコモンレターにわけて取り上げ,それぞれ効果的なライティング技法を紹介しています(☞第3章4参照)。コモンレターの実例としてAnnals of Internal Medicine(Ann Intern Med)のレター,アンコモンレターの実例としてThe Lancetのコレスポンデンスを取り上げました。いずれも私が一臨床医として投稿し,アクセプトされたものです。Lancetに掲載されたコレスポンデンスは,近年国際的にミリオンセラーとなった『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』という書籍にも引用され,非常に多くの方々に認知されています。

アンコモンレターの書き方は,いわゆるアカデミックライティングによる英文エッセイに通じるものがあります。したがって,医学誌のみならず,英字新聞やその他の媒体で自分の意見を主張する際にも有効です。そこで,「現在何も研究していない」「もともと研究にはあまり興味がない」「医学論文はあまり読まない」, さらには「英語は苦手」「英文ライティングにはなじみがない」という人にも理解しやすい構成にしました。

第1章では日頃研究に携わっていない開業医,勤務医,さらには若手の専攻医,研修医にとって,トップジャーナルが発信の場になりうることを紹介しました。第2章では医学生を対象に,英語の得意・不得意に関係なく医学英語を効率的に学習し, 発信するためのヒントを書きました。第3章では医学誌のコレスポンデンス, レターに関する知識を深めて頂き,アカデミックライティングの手法で実際にレターを作成する方法,説得力ある英文を書くための「Rad-See」について説明しました。Ann Intern Med,Lancetの掲載例をもとに,「どのような構成にするか」「英文チェックの際,どこに留意すればよいのか」を具体的にわかりやすく書いています。第4章では日本人を含めたノンネイティブの書く英語の問題点,アクセプトを遠ざける英語表現を挙げ,原稿投稿時にチェックすべきポイントを説明しました。

近年,機械翻訳や大規模言語モデルといったAIの進歩で和文英訳は非常に身近になりました。英文を書き慣れていない人でもChatGPTなどを活用して本書で紹介する構成に組み立て,自分でしっかり校正してオリジナルな内容に仕上げれば,容易に投稿可能な時代になりました。皆さんの貴重な意見を国際社会にぜひ発信して下さい。本書で示した英文ライティングは国際標準の手法であり,医学のみならずビジネスでも通用します。実際,この手法で英文医学誌のみならず,Japan Timesやその他の英字新聞に私の提言は何度も掲載されています。この先,皆さんの英文がトップジャーナルを含めた多くの医学誌,その他の媒体にアクセプトされることを心より願っています。

この時代に生き,医学界に貢献した証として,ぜひ皆さんの名前をトップジャーナルに刻んで下さい。医療のより良き未来に向けて。
2024年12月 市堰 肇

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