No.5154 (2023年02月04日発行) P.70
関なおみ (東京都特別区保健所感染症対策課長、医師)
登録日: 2023-01-24
最終更新日: 2023-01-24
全ての医療機関で発熱患者に対応する体制を構築するためにはどうすればいいのか。地区医師会と意見交換する中、個人的には、現在医療機関は以下の4種類に分かれていると思っている。
①きまじめ組(善意や使命感があり、診療・検査医療機関として機能)
②みまもり組(感染症は他人事だったけど、そろそろかかりつけ患者だったら対応した方がいいのか、迷い中)
③コワガリ組(感染症はよく分からないから怖い、関わらないのが一番だ)
④ワルノリ組(検査のみ実施、リスク評価せず全員に経口投与薬が必要として発生届を提出、健康観察もやっているふりなど、補助金制度を乱用)
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①は保健所同様摩耗している一方、④が増殖し、ビジネス化している。医師の倫理観が崩壊していると感じるのは、これまでの医療があまりに性善説前提で運営されていたからか。
①が④に駆逐されないよう、②、③を①へ誘導するためには、どうしたらよいのか。一つは感染症法上の類型変更により、法的に全医療機関で対応とし、診ないとは言えない環境を整備することだ。それでも②や③は腰が引けてしまうかもしれないというならば、この3年間のエビデンスを基に、現実的な診療環境の在り方を提示することだろう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は発生当初、「未知の感染症」として、待合室や診察室の導線分離、個人防護具(personal protective equipment:PPE)の装着など厳重な感染管理が要求された。報道等による風評被害も激しく、陽性者が出れば自主的に休診しなければならないといった風潮もあり、発熱患者の診察を断念した医療機関も多かったのではないか。
今やCOVID-19は国民の4人に1人は感染したことがあり、感染経路や臨床経過もほぼ解明され、ワクチンの効果や治療方法もある程度確立した感染症になっている。発熱だとかかりつけ医に診てもらえず、見ず知らずのコンビニ的発熱外来へ行かざるを得ない状況について、医療の質が低下していると感じる人も多いのではないだろうか。
診療・検査医療機関が増えない背景には、単に最初の登録のタイミングを逃してしまったがために、ずっと熱のあるかかりつけ患者を断ってきた、どこか後ろめたさを抱えている、悪意のない医療機関がたくさんあるのだと信じたい。今こそ、これらの「良貨」を動員し、偽札を駆逐する仕組みを、現場と協同して築いていく必要がある。
【参考】
▶ 東京都福祉保健局:診療・検査医療機関について.
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/iryokikan/shinryoukensa.html
▶ 日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第5版. (2023年1月17日)
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide5.pdf
関なおみ(東京都特別区保健所感染症対策課長、医師)[新型コロナウイルス感染症][発熱外来][類型変更]