医薬品医療機器総合機構(PMDA)は6月29日、重篤副作用疾患別対応マニュアル(医療従事者向け)について、多形紅斑と低カリウム血症を追加し、10疾患を改定した(表)。
同マニュアルは、重篤度等から判断して必要性の高いと考えられる副作用について、臨床現場の医師、薬剤師等が活用する治療法、判別法等を包括的にまとめたもの。厚生労働省の委託により、関係学会において作成されたマニュアル案を厚生労働省の重篤副作用総合対策検討会が取りまとめた。
■多形紅斑─発熱と粘膜症状がある場合は入院
多形紅斑については、早期に認められる症状として、「医薬品服用後の境界明瞭な紅斑、紅斑の中央部に形成される水疱、多形紅斑重症型では発熱、両眼の結膜充血や口唇の発赤」と説明。
医療関係者の対応のポイントとしては「多くは原因薬の中止とステロイド外用、中等量までのステロイド全身投与で治癒する」と指摘。ただ、発熱が続き、粘膜症状がある場合は、スティーヴンス・ジョンソン症候群との鑑別が必要となるため入院のうえ観察を行うとした。
また、多形紅斑は薬剤に対する反応のほか、感染、自己免疫疾患、妊娠、寒冷刺激、内臓悪性腫瘍など様々な原因で発症すると注意喚起。特にマイコプラズマや連鎖球菌などの細菌感染や、単純ヘルペスウイルス感染に伴う多形紅斑は、しばしば薬剤性の多形紅斑との鑑別が必要になると説明し、薬剤の摂取時期と症状の出現時期との関係を注意深く問診することを求めた。
■低カリウム血症─四肢脱力、推定原因医薬品に注意
低カリウム血症については、推定原因医薬品として「主に利尿薬(ループ利尿薬、チアジド系利尿薬)、甘草を含む漢方薬、グリチルリチン製剤、アミノグリコシド系抗菌薬、シスプラチン、 その他ヒドロコルチゾンやプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド」などを列挙。
対応のポイントとして「四肢の脱力を認め、推定原因医薬品を使用している場合には本症が疑われる」とし、早急に採尿・採血検査等を行うことが必要だとした。
■骨粗鬆症、顎骨壊死─最新知見を反映
改定した10疾患のうち、骨粗鬆症は、ステロイド長期服用者の30〜50%に続発性骨粗鬆症による骨折を伴うとされていることや、2014年にステロイド性骨粗鬆症の管理と予防のアルゴリズムが発表されていることから、最新の知見を反映。
骨吸収抑制薬に関連する顎骨壊死・ 顎骨骨髄炎は、関連学会による「2016年版ポジションペーパー」の考え方に沿って改定した。
■高血糖─免疫チェックポイント阻害薬の副作用
高血糖は、免疫チェックポイント阻害薬で劇症Ⅰ型糖尿病発症の副作用が報告されたことを反映。低血糖は重症低血糖に関する学会の全国調査の結果を反映した。
ネフローゼ症候群は、新たな診断基準が出ていることと、使用頻度の高い薬剤が変わっているため見直した。
また、急性腎障害(急性尿細管壊死)は新たな診断基準が出ているため、間質性腎炎は使用頻度の高い薬剤が変わっているため、見直した。