厚生労働省は19日の社会保障審議会医療保険部会で、健康寿命の延伸に向け、医療保険における高齢者の保健事業と介護保険における介護予防を一体的に実施していく方向性を示した。近日中に医療関係者、保険者、学識経験者らで構成する有識者会議を設け、制度間の「縦割り」の解消に向けた検討を開始する。
75歳以上が加入する後期高齢者医療制度(医療保険)では、フレイル(低栄養・虚弱)対策などの保健事業が展開され、実施主体は都道府県単位の広域連合となっている。74歳以下は健康保険・国民健康保険の被保険者となるため、75歳を境に提供される事業内容と保険者が変わる。一方、介護予防は市町村が65歳以上の被保険者を対象に介護保険の枠組みで運営している。現状では保健事業・介護予防の実施主体はバラバラだ。
厚労省の構想では、住民組織やNPO等が運営する地域の「通いの場」を疾病予防・重症化予防の拠点とする。拠点の拡大や運営に対する支援は、広域連合より住民に身近な市町村が担う。市町村から栄養士・保健師等の専門職を定期訪問させ、運動、口腔ケア、栄養指導、保健指導などを一体的に受けられるようにすることで、健康リスクのある高齢者を市町村と連携するかかりつけ医療機関への早期受診につなげる。
有識者会議では、事業内容、市町村・広域連合・保険者の役割分担、財源負担の配分などについて、制度と実務の両面から課題を検討する。高齢者医療確保法と介護保険法の改正も視野に、年内にも報告を取りまとめる。