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薬物性肝障害の診断と最近の動向 [内科懇話会]

No.4788 (2016年01月30日発行) P.46

司会: 山中正己 (帝京大学名誉教授/上尾中央総合病院名誉院長)

演者: 滝川 一 (帝京大学内科主任教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • 【司会】 山中正己(帝京大学名誉教授/上尾中央総合病院名誉院長)

    【演者】 滝川 一(帝京大学内科主任教授)


    薬物性肝障害は,予測可能なものと予測不可能なものにわけられる。また,肝障害のタイプによる分類は,肝細胞障害型,胆汁うっ滞型と,これらの混合型がある

    薬物性肝障害の起因薬としては抗菌薬,精神科・神経科用薬,解熱・鎮痛薬,循環器用薬などが多いが,最近では民間薬,健康食品,漢方薬,高脂血症用薬の増加が目立っている

    薬物性肝障害にはスタンダードな治療はないが,UDCA,副腎皮質ステロイド,SNMCなどが使用され,さらに血漿交換療法や移植が行われる

    薬物性肝障害の種類

    薬物性肝障害の種類は,大きく予測可能なものと予測不可能なものにわけられます(図1)。予測可能なものは直接の肝障害で,頻度が高く濃度依存性です。有名な例として,アセトアミノフェン(acetaminophen:APAP)があります。欧米での急性肝不全の半分以上はAPAPの中毒によって起こっていますが,日本ではそれほど多くありません。この機序ははっきりしています。動物実験で,いろいろなものをノックアウトして変えてみると,やはり個体のいろいろな因子が関わってきますが,予測不可能なほうの特異体質による肝障害と比べて個体の因子の関与は非常に少ないわけです。

    一方,予測できない特異体質による肝障害は頻度が低く,これには2つの病態があります。1つはイソニアジド(isoniazid:INH)に代表される代謝の特異体質で,一部の患者で毒性の高いメタボライトができて,それが肝障害の原因となっているのだろうと考えられています。もう1つは,アレルギーの機序によると考えられているハロタンによる肝障害です。この2つは頻度が違いますが,代謝能,環境因子,遺伝的因子,免疫能が非常に大きく関わっています。

    特異体質による薬物性肝障害には,代謝性とアレルギー性があると言いました(表1)。アレルギー性のものはneoantigenと言って,普通は薬物の分子量が小さく,それが主に肝臓の蛋白とくっついて,血中に出ます。それに対して免疫反応が起こるのだろうと考えられています。発症までが1~5週で,発疹,発熱,末血の好酸球,アレルギー症状が見られることが多くあります。


    偶然,ある薬物で肝障害を起こして,違う医療機関でその薬物を処方されて,さらに服薬してしまうということがあります。そうすると,急速に肝障害が起こります。また,問題はアレルギーですから,一度感作されると,次に服薬したときには非常に重症な反応が起きることがあります。

    一方,代謝性は個人の代謝酵素の特異性によって肝毒性の代謝酵素ができると考えられています。発症までが長い(1週~1年)ものが多いとされ,アレルギー症状はみられないため診断されにくく,偶然再投与された場合でも,ある程度体内に蓄積されるまで障害は起こらないことから,非常に診断しにくいことがあります。

    薬物性肝障害の分類には,発生機序による分類のほかに,肝障害のタイプによる分類があります。それには,肝細胞が壊死するタイプの肝細胞障害型,トランスポーターがダメージを受けるためだろうと考えられていますが,それによって胆汁の流れが悪くなって肝障害が起こるタイプの胆汁うっ滞型,さらに,これらの混合型があります。これらの分類は肝生検ではっきりわかりますが,いきなり肝生検はできませんので,初診時に判断しなければなりません。ALTやALPが正常上限の何倍かという比を取ります。この比が5以上ですと肝細胞障害型で,2以下ですと胆汁うっ滞型,2~5が混合型と分類しており,この分類は世界共通です(表1)。

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