私が老年精神医学を主な仕事としたのは昭和末期で、既に30年以上が経過しました。
昭和の頃はレビー小体型認知症の概念はなく、今考えればレビー小体型認知症を「幻覚を伴うアルツハイマー型痴呆」とか「老年期精神病」、「晩発性精神分裂病」などと診断していました。ライオンが居ると興奮し、ハロペリドールを投与すると激しいパーキンソン症状が出現した男性や、肩のところに猫がいると常に首を振っていた女性が入院していましたが、おそらくレビー小体型認知症だったでしょう。
レビー小体型認知症は小阪憲司先生が1976年に初めて報告されましたが、1996年に最初の診断基準が発表され、この疾患概念が広く知られるようになりました。現在ではアリセプトが治療薬として認められ、アルツハイマー型認知症についで2番目に頻度が高い認知症とも言われます。
しかし、1996年の診断基準には「正常な社会的または職業的機能に障害をきたす程度の進行性認知機能障害の存在。初期には記憶障害が目立たないこともある。」とありますが、現在でもつい「レビー小体型認知症」の「認知症」という病名に引っ張られて診断を誤ってしまう場合があります。
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