2024年の出生者数は72万988人と過去最少の数字でした。貴重な子どもの命を守らなくてはなりません。筆者らは地域における18歳未満の子どもの死亡例を検証し、防ぎうる死の予防や、死が避けられない子どもに対する医療や支援の充実に努めています(child death review:CDR)。
筆者が検証している地域では、子どもの死亡例の約2/3は病死、1/3は外因死です。そして、外因死のうち最も多くを占めるのが自殺です。自殺例を検証して、事前に気づける変化はなかったのか、子どもが発するサインはなかったのか、早期に介入できなかったのかなどが話し合われます。しかし、どうしても周囲が気づけるようなサインを発せずに、自殺に至る例があります。その背景には、近年の子どもの生活状況が関係しているようです。
昨年、政府は青少年のインターネット利用環境実態調査結果を公表しました。年齢とともにインターネットの利用率は高くなりますが、驚いたことに、1歳児では33.1%、2歳児では58.8%が利用しており、6歳児では8割を超えました。利用する手段はスマートフォンや携帯電話が圧倒的でしたが、6歳児では既に13.3%の子どもが自分専用のスマートフォンを所持しているそうです。そして、その率は年齢とともに上昇し、10歳以上の小学生では70.4%、中学生では93.0%となりました。
目的としては、低年齢ほど動画の視聴やゲームが多かったのですが、年齢とともに、情報検索や投稿、メッセージ交換の割合が上昇していきました。このように、現在の子どもたちが育ってきた環境は、明らかに私たち大人とは異なります。
6歳就学前までの子どもの生活について、民間の研究所が継続的に調査を行っています。「幼稚園や保育園以外では誰と一緒に遊ぶか」という問いに対して、1995年には「兄妹」や「友だち」と答える割合は半数以上でした。しかし、その割合が年々低下し、2022年にはそれぞれ38.8%および16.0%でした。さらに、よくする遊びとして、砂場遊び43.7%、鬼ごっこや缶蹴り31.2%に対して、YouTubeの視聴が58.7%になっていました。
このように、外で兄妹や友人と遊ぶより、スマートフォンなどを手にしている機会のほうが多いようです。
子どもたちの多くは幼少期からインターネットで情報を得て、コミュニケーションもインターネットが主体となっています。友人や家族に何かを相談する機会は減り、インターネットで自己解決しようとしているようです。その結果、たとえ悩んでいたとしても、それが発信されず、周囲がこころの変化に気づけない状況になります。
社会では自殺予防に向けた相談窓口や相談ダイヤルがありますが、インターネット社会で育った子どもたちに有用なのか検証する必要があります。とは言っても、このようなSNSが中心の社会を後戻りさせることはできません。
子どもを育てる上で何か足りないところがあったはずです。子どもの自殺予防のために今、大人が立ち上がらなければなりません。