筆者は内分泌外科医です。甲状腺専門病院を運営しているので、甲状腺と副甲状腺機能亢進症(HPT)の手術が主体です。甲状腺疾患で外科適応のもっとも多いのは甲状腺癌ですが、病状により切徐範囲が決まります。
しかし、HPTの手術では、まず病気をもたらす副甲状腺を検索して切徐しなければなりません。画像診断が進歩したとはいえ、手術前に病的副甲状腺腫の局在が同定できないこともあります。つまり、HPTの診断と治療については、非常に簡単な症例(生化学的に明らかなHPTがあり、画像検査で1腺だけの明らかな腫大副甲状腺腫を認める)から、非常に難しい・悩ましい症例まで幅広いスペクトラムを有していることになります。手術を行っても病気を治すことができず、また副損傷のみをもたらす可能性のある疾患です。
そこで、初回手術で病的副甲状腺腫を摘出できず経過観察していた患者さんで、病気の進行のため局在診断ができない状況で再度手術を行った経験を紹介します。題目どおり、探せども宝は出てこない憂鬱な手術時間を過ごし、あきらめかけた頃に宝を見出し、何とも言えない高揚感を味わった忘れられない症例です。
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