今後、地域包括ケア(システム)の構築が全国的に進むにつれて、医師の仕事・働き方が相当変わってくるのは確実です。今回は、本年度、大手予備校(河合塾)の医学部進学を目指す高校生・浪人生を対象に行った「特別講座」(ビデオ講義)のインタビューをベースにして、この点についての私の考えを簡単に述べます。
この講義では、まず厚生労働省が目指している地域包括ケアの概要と背景と問題点、および医療関係者が地域包括ケアを考える上での留意点を述べました(概要と背景は略します)。
問題点は次の2つです。①最大の問題点は、法律上の対象が高齢者に限定されていること。②現政権が厳しい医療・介護費用の抑制を続けていることが、地域包括ケア構築の「ブレーキ」になっていること。
留意点は以下の3点です。①地域包括ケアシステムの実態は「システム」ではなく「ネットワーク」。②地域包括ケアは「地域医療構想」と法律的にも、実態的にも一体で「車の両輪」。③地域包括ケアに参加する病院は多様。
③についてはさらに次の3点を強調しました。(a)地域包括ケアに含まれる病院の法律上の規定はないが、概ね200床未満の中小病院です。今後は、地域の中小病院は地域包括ケアに積極的に参加しなければ生き延びられません。(b)ただし、一部の地域では大学病院・大病院も積極的に参加しています。その代表例は、愛知県の藤田保健衛生大学です。(c)最近は、地方、特に過疎地域の先進的病院、「保健・医療・福祉複合体」が地域包括ケアシステムの構築を通して、地域づくり、地域社会の再生にも取り組んでいます。
その上で、「地域包括ケアによって、医師の仕事、働き方はどのように変わっていくのか?」と「地域包括ケアに向けて、将来の医師を志す者は、何を意識して学び、心しておくべきか?」について以下のように述べました。