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オラパリブ

No.4924 (2018年09月08日発行) P.53

荒木和浩 (兵庫医科大学乳腺・内分泌外科准教授)

三好康雄 (兵庫医科大学乳腺・内分泌外科教授)

登録日: 2018-09-07

最終更新日: 2018-09-04

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【遺伝性乳癌卵巣癌症候群におけるトランスレーショナル医療の大きな一歩】

生殖細胞系BRCA1・BRCA2遺伝子変異を有する乳癌の治療薬としてオラパリブが無増悪生存期間(PFS)を延長した。BRCA1・BRCA2は損傷したDNAの相同組み換え修復関連遺伝子であり,いずれかの変異でDNAの二本鎖切断が適切に修復されない。これらの遺伝的変異は乳癌と卵巣癌のリスクを高め,その他のがんのリスクとも関連する。BRCA遺伝子変異は遺伝性乳癌の約20~25%,全乳癌の約5~10%,卵巣癌全体の約15%を占める。この遺伝子変異に関連する乳癌(HBOC)は,散発性乳癌に比べ若年で発症する傾向がある。

オラパリブはポリ(ADP-リボース)合成酵素(PARP)阻害薬であり,DNAの一本鎖修復を阻害する。正常細胞ではPARPが阻害されても相同組み換え修復が機能するが,BRCAに変異を有するがん細胞では両方の修復機構が阻害される結果,合成致死となって細胞死が誘導される。

OlympiAD試験は,302例の生殖細胞系BRCA遺伝子変異を有するHER2陰性転移性乳癌におけるオラパリブ(300mg 1日2回投与)の有効性と安全性を医師の選択した化学療法(カペシタビン,ビノレルビン,エリブリンのいずれか)と比較した無作為化多施設共同第3相試験である。PFSを3カ月延長し(ハザード比:0.58,P=0.0009),副作用が少なくQOLもより望ましい結果であった1)。生殖細胞系BRCA遺伝子変異HER2陰性転移乳癌の標準治療薬となることが待望されるとともに,正確で精密な治療への遺伝子診断の重要性が増した。

【文献】

1) Robson M, et al:N Engl J Med. 2017;377(6):523-33.

【解説】

荒木和浩*1,三好康雄*2  兵庫医科大学乳腺・内分泌外科 *1准教授 *2教授

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