写真はスウェーデンのレーベルBISよりリリースの「THE MAIDEN IN THE TOWER/KARELIA SUITE:SIBELIUS」。ネーメ・ヤルヴィ指揮、エーテボリ交響楽団演奏(1983年5月7日エーテボリコンサートホールにて録音)
1996年、スウェーデン・カロリンスカ研究所で勉強させてもらう機会があり、ストックホルムでの生活を経験した。冬の北欧は、日照時間も短く、午後3時頃になると既に外は暗く、自然と室内での暖かい灯りに心が動いていく。暗く長い冬の楽しみとして、クラシックコンサート通いにはまってしまった。
ストックホルムで有名なホールといえば、ノーベル賞授賞式が行われるコンサートホールであるが、驚いたことにチケットも日本と比較すると、半額以下で購入できるため、ほぼ全ステージに足を運んだ。このホール以外にもベルワルドホールというコンサートホールがあり、寒い冬の日曜日、このホールでのネーメ・ヤルヴィ指揮、エーテボリ交響楽団のコンサートチケットを手に入れた。録音CDの数ではカラヤンに匹敵するといわれているヤルヴィは、スウェーデンでは絶大なる人気を保っている。
この時のプログラムの1つが、カレリア組曲だった。カレリア組曲は、シベリウスが1893年に作曲した『カレリア』に基づく組曲で、フィンランドとロシアとの国境付近に位置するカレリア地方の13~19世紀までの歴史が描かれている。当時、カレリア地方はスウェーデンとロシアの両大国の狭間で、多くの苦難の歴史があった地域で、フィンランド人にとっては精神的な故郷とも言われている。
ヤルヴィの情感あふれる指揮さばき、会場と一体になった乗りの良さに圧倒された。コンサートが終演しても、会場は興奮が収まらず、中には涙を流しながら、拍手を送っている人たちが数多くみられ、曲に込められた苦難と栄光の歴史を実感させられた。研究、仕事の結果が出ないで悩み落ち込んだとき、元気にしてくれる一曲である。