【高齢者を診療する際は,てんかんの可能性を念頭に置くことが重要】
てんかんは頻度が高い神経疾患である。てんかんの発症率は,人口10万人当たり新生児期から小児期で約100人であったのが,成人期で約25~50人と低下し,60歳以上の高齢になると約50~100人と再び上昇に転じることがわかっている。わが国の高齢者人口は,現在約2600万人であるが,2055年には約3600万人になると推測され,高齢発症てんかんはこれまで以上に増加すると考えられる。
てんかんは全般てんかんと部分てんかんにわけられるが,高齢発症てんかんの多くは症候性部分てんかんであり1),病因として脳血管障害や神経変性疾患が多い。発作型は複雑部分発作が多く,二次性に強直間代発作も起こす。そのため,典型的な発作症状を示さず,認知症と誤診されるケースも多い。高齢発症てんかんと認知症の鑑別点として,①状態が良いときと悪いときの差が大きい,②記憶がないときとあるときが混在する,③意識が短時間(3~5分)とぎれる,④口をペチャペチャさせる,手をモゾモゾするなどの自動症がある,⑤睡眠中の痙攣,などが挙げられる。
高齢発症てんかんに対する薬物治療は,認知機能や脂質・骨代謝への影響,併用薬との相互作用が少なく,部分発作に有効な薬剤を選択し,低用量から開始することが望ましい。
高齢者では,認知症のみならずてんかんの可能性を念頭に置きながら診療することが重要である。
【文献】
1) Werhahn KJ:Dtsch Arztebl Int. 2009;106(9): 135-42.
【解説】
清水秀明 愛媛大学精神科特任講師