ラダックでの最終目的地は、標高4200メートルにある真っ青な湖パンゴンツォだった。ここへ行きたいと思ったのは、2009年に大ヒットしたインド映画「きっと、うまくいく」がきっかけだ。
ロケ地のひとつにこの湖があった。映画などの舞台が「聖地」として人気が出るのはよくあることだ。いつも、しょうもないこっちゃなぁと冷ややかに見ているのだが、こんな遠くにまで行ってたら世話はない。
美しさの他には何もない湖なのだが、この映画以来、インド人観光客が激増したらしい。有名シーンを真似する椅子が賑わっていたので、ミーハーにパチリ。聖地でのひとときはけっこう楽しかったりする。
天国のようなホテルがあったヌブラ谷から川沿いに道が通じている。ただし季節限定で、雪解け水が多くなる時期には走れない。ギリギリのタイミングだった。その道がダメだと、標高5000メートルの峠越えというとんでもない回り道になる。
ところどころ道路が冠水していてスリル満点。なんとか通れたが、水かさの増えた激しい濁流は車窓から見ているだけでも恐かった。切り立った山々が美しかった。
パンゴンツォは予想を超える絶景だった。空の青さと雲の白さが湖面に映えて刻々と色が変わり、夕方には赤く染まった。わざわざ行っただけの値打ちは十分あった。
ラダック旅行は思っていた以上のインパクトだった。どの景色も実に壮大だった。それにも増して、電気もまともに使えない村での民泊などが新鮮で強烈だった。そのおかげで帰国してからエコ生活になっているし、当地のヘルシーな食事で減った体重はそのままキープできている。
いまも、毎日ちょっとずつだけれど、「オムマニパドメフム」と、マントラを唱えながらマニ車を回している。もちろん、ラダックの人々と同じように、世界の平和とみんなの幸せを祈りながらである。
そんなことをして何になるのかと思われるかもしれない。しかし、世界中の人たちが、平和と幸せを毎日祈ったら、世の中が少しずつ変わるかもしれないと妄想している。それに、何となく気持ちが落ち着く。
笑われるかもしれないけれど、その程度のことで、世界中がきっとうまくいくようになるのではないか、と本気で思えるようになって帰ってきたのでありました。
なかののつぶやき
「こんなことまで、ついやってしまいました…」