【新規作用機序の抗インフルエンザ薬】
バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザⓇ)は,厚生労働省の創薬促進事業のひとつである「先駆け審査指定制度」の対象として,わが国からグローバルに展開する医薬品として,2018年2月に塩野義製薬から製造販売が承認された。これまで,抗インフルエンザ薬はオセルタミビル(タミフルⓇ)などのノイラミニダーゼ阻害薬が主であったが,新規の作用機序を持つ薬剤として,臨床使用が可能となった。
本薬はインフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害し,mRNA合成を阻害することで増殖を抑制する。成人患者を対象とした第3相試験では,平熱に回復する時間がプラセボ群の40.2時間に対して,投与群は24.5時間と有意に短く,特徴的なこととして,速やかで著明な抗ウイルス効果が認められた。
また,小児患者を対象とした国内第3相試験でも成人患者と同様の成績が得られ,安全性においても重篤なものはなく,発現率が5%以上の有害事象は嘔吐のみで,その優れた安全性も示されている。本薬は単回投与の経口薬であり,成人から小児まで,その優れた有効性と安全性が期待されており,今後のインフルエンザ治療を大きく変える可能性がある。さらに,新型インフルエンザや高病原性トリインフルエンザに対する有効性も想定されることから,パンデミック対策としての治療薬としても,その効果が期待される。
【参考】
▶ Omoto S, et al:Sci Rep. 2018;8(1):9633.
【解説】
前﨑繁文 埼玉医科大学感染症科・感染制御科教授