日本医師会、都道府県医師会、郡市区医師会の役員が一堂に会し、医療を巡る課題と理念を共有する「全国医師会・医師連盟医療政策研究大会」が25日、初めて開催された。会場の都内ホテルには700人余が集結。横倉義武日医会長と権丈善一慶大商学部教授が講演を行った。
講演で横倉氏は、来年7月に参議院議員選挙が控える政治日程を睨み、「政府は2019年度予算編成・税制改正で国民の負担を増やす施策を取りにくい状況。だから健康寿命の延伸がクローズアップされている。しかし、参院選後には医療費抑制と負担増について大きな議論が起きる」との見方を示した。一方で「社会保障を政争の具にしてはならない」と述べ、「協議の場をつくり、合意と納得のいく負担と給付を導き出すべきだ」と訴えた。
権丈氏は、エビデンスに基づかない言説で大衆人気を得る「ポピュリズム医療政策」が蔓延しつつあると警告。その論理展開として、①社会保障費や医療費を名目値(総額)で語り、医療費負担の増大を過大視して不安を煽る、②終末期に莫大な医療費がかかるなどエピソードベースの話で驚かす、③医療費(特に終末期)は予防で抑制可能とデマを飛ばす、④終末期で浮いた財源を若い世代に回せば全世代型社会保障を実現できると大衆受けする話で結ぶ―との例を示し、厳しく批判した。
社会保障費の将来を名目値のみに着目して論じる手法は「完全な誤り」と断じ、対GDP比で議論すべきと強調。その上で「医療費は今後も負担できる範囲内でしか増えない」とし、予防医療の医療費抑制効果について「限界があるのは経済学的に確かだが、予防で健康になることの価値は大きい。医療関係者には、お金をかけてでもやるべきだと主張してもらいたい」と提起した。