「死とは、古い衣服を着替えるようなものだ。生命そのものは無限の時間を生き続ける」。ダライ・ラマの言葉だそうです。
長年に亘ってご子息の神経難病に立ち向かわれたご遺族の女性から「オカリナの子守歌」という彼女自身の著書を頂きました。合格通知を受け取られた後で発病され、楽しみにされていた入学式の日も闘病生活を送られたご子息の“生き抜いた証として書かれたレクイエム”とのこと。その終章に冒頭のラマの言葉が引用されていました。
ご子息の言葉、主治医の言葉、看護師の言葉、ご家族の言葉、どの一言も、いかに彼女の心に響いたかが行間にも溢れています。精一杯ご説明し患者さんと一緒に病気に向かっていきたいと思って診療にあたってきました。でも、患者さんの悩みや思いはもっとずっと深いことに心を突かれました。難病のご子息の言葉にお母様は揺れ動かされます。医療者の言葉にも大きく揺れ動かされます。ちょっとした口調、表情も患者さんの心には稲妻が光ります。ご子息の闘病の思いが消えることはなかったでしょう。そのお母様が患者さんになられた時、僕の申し上げた言葉がどのように響いていたのだろう、どのようにお声掛けしていたら良かったのだろう、思いはつきません。
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