日本医師会は22日、医療通訳の現場の問題点など、各医療通訳団体が持つ情報を総合的・横断的に共有することを目的に設置した「医療通訳団体等連絡協議会」を初めて開催した。同日は、国会議員や厚労省担当官などのほか、22医療通訳団体から37人が出席した。
冒頭の挨拶では、医師で日本医師連盟参与の自見はなこ参議院議員(自民党)が、自民党や政府も外国人医療問題の対策に力を入れていることを強調。「この機会を通じて政策提言につなげていきたい」と意欲を見せた。
厚生労働省の迫井正深審議官(医政、医薬品等産業振興、精神保健医療、災害対策担当)は、今後ますます訪日外国人の増加が見込まれる中、「適切な医療の確保が重要な課題」との認識を示した。医療通訳に関する課題としては、アクセスの確保、通訳の質、コストの3つを挙げた。厚労省は来年度の事業として、希少言語への対応やICT技術に対応するタブレットの配布を実施する予定だという。
通訳の質の担保については厚労省研究班で医療通訳認証の実用化に関する研究の代表者を務める中田研氏(阪大)が国際臨床医学会(澤芳樹理事長)が認定する「医療通訳認定制度」の実用化を目指していることを紹介。今年度中にも試験と研修に関するガイドラインを策定し、来年度にも制度をスタートする方針を明らかにした。認定医療通訳者の要件は、厚労省の「医療通訳育成カリキュラム基準」に基づく育成、試験合格認定、医療機関での研修だとした。
医療通訳者の職能団体である全国医療通訳者協会の森田直美代表理事は、現在、30都道府県に分布する38医療通訳団体の存在を把握していることを報告。2017年度の38団体の派遣実績は約1万6600件に及んだという。
一方、AMDA国際医療情報センターの理事長で医師の小林米幸氏は、「言葉が通じないという理由で受診を断られることが普通に起きている」と問題視。患者が電話通訳を依頼したものの医師が拒否する事例もあるという。小林氏は誤診防止やプライバシー保護の観点から、専門訓練を受けていない同行者の通訳を回避するために、医療通訳の必要性について、医師を含めすべての関係者で認識を共有すべきだと訴えた。
また軽症での大病院受診や不要な救急搬送の防止策として、診療所を含め全国どこでも医療通訳を利用できる体制の整備を求めた。
電話医療通訳システムを運営している一般社団法人JIGHの澤田真弓理事は、「誤訳が起きたときの責任のとり方についても議論が必要だ」と指摘。「医療通訳団体が保険に加入するのも一案だ」と述べた。