摂食障害の治療支援を統括的に行う全国基幹センターが国立精神・神経医療研究センターに設置されたのはおよそ4年前。現在までに治療支援センターが宮城、千葉、静岡、福岡で整備されている。基幹センターの設置に尽力し、現在は当事者側に立った「日本摂食障害協会」で理事長を務める生野照子氏(なにわ生野病院心療内科部長)に話を聞いた。
日本は摂食障害患者が多いと言われているにもかかわらず、欧米諸国に比べ、当事者支援の整備が遅れていました。子どもや若者がこの病気でとても苦しんでいる。ときには命を落とすこともあるのに、なぜ放っておかれているのか。憤りもあって在籍していた大阪市大の小児科を窓口として、1985年に家族会を立ち上げました。すると、会合に日本各地から100名ほどいらっしゃったんです。当事者同士が相談し、力づけ合うセルフヘルプ活動の効果は、治療にも好影響を与えました。
全国規模で活動する必要性を感じ、参加を呼び掛けると、当事者はたくさん集まりました。一方、賛同する専門家は少ないどころか、「当事者組織が役に立つのか」という反論が目立ちました。
しかし専門家を動かさなければ治療には結びつきません。当時日本には、摂食障害の専門病院が皆無でした。さらに、治療が複雑で時間もかかることから、摂食障害は診ないという医療機関も増え始めていました。私は日本摂食障害学会に協力を求め、2010年、専門家を中心とした「摂食障害センター設立準備委員会」を立ち上げました。そして、まずは国として摂食障害を治療する病院をつくるべきだと訴えました。