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細胞外小胞と胆膵癌

No.4947 (2019年02月16日発行) P.57

千代永 卓 (熊本大学消化器内科)

佐々木 裕 (熊本大学消化器内科教授)

登録日: 2019-02-14

最終更新日: 2019-02-12

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【細胞外小胞は胆膵癌診断のバイオマーカーとなりうるか?】

膵癌は一般的に早期発見が困難な上,比較的早期に転移が起こり予後不良のがん種である。胆道癌も胆管生検や細胞診などにより確定診断されるが,手技の難易度や複雑さもあり,診断精度も完全とは言えない。このような状況において,近年,胆膵癌の診断において細胞外小胞の有用性が報告されてきた。

細胞外小胞は細胞から放出され細胞間のコミュニケーションを担うとされているが,がんの増殖転移との関連も指摘されている。中でも,細胞外小胞の一種であるエクソソームが膵癌の早期発見に有用であったとの報告がある1)。具体的には,glypican-1という蛋白を含んだエクソソームが膵癌細胞株由来で多いこと,また,膵癌患者の血中にも存在するため,感度,特異度ともに高いバイオマーカーとなりうることが示唆されている。

一方,胆管狭窄患者の胆汁中の細胞外小胞の濃度と胆膵癌との関連も明らかになっている2)。すなわち,一定の細胞外小胞濃度を閾値とすると,高い精度で悪性疾患と非悪性疾患を区別できる,という内容である。また,血中の細胞外小胞濃度より,胆汁中の細胞外小胞濃度のほうが,診断精度がより高いという結果であった。
これらの報告での診断精度は高い。細胞外小胞やエクソソームを簡便に同定し測定できるような方法論が確立すれば,難治性とされる胆膵癌の早期診断につながることが期待される。

【文献】

1) Melo SA, et al:Nature. 2015;523(7559):177-82.

2) Severino V, et al:Gastroenterology. 2017; 153(2):495-504.

【解説】

千代永 卓,佐々木 裕 熊本大学消化器内科 *教授

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