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海外派遣された自衛隊への医療体制:現状から見た課題と提言

No.4948 (2019年02月23日発行) P.24

佐々木 勝 (元内閣官房参与,元都立広尾病院院長)

登録日: 2019-02-20

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  • 〔要旨〕自衛隊員は国を守る使命を持っている。そのため,有事の際は,命を顧みずに戦うことになる。私たちは遠く離れた地域にいても,この自衛隊員の命を守る義務がある。しかし,実際には自衛隊員の命は軽視されていると思わざるをえない。2018年10月2日のフィリピンでの事故対応などを見ると,必ずしも自衛隊員の命は守られていない。戦闘における負傷はもちろん,このような事故に対しても防衛省・自衛隊の医学的対応の充実や強化が望まれる。

    1 海外派遣自衛隊を取り巻く医療体制の現況

    新聞などの報道によると,2018年10月2日,フィリピン人男性が運転する車で一緒に移動していた陸上自衛隊員2人が大型車両と正面衝突し,1人が10月6日夜(7日午前との報道もあった)死亡,他1人が負傷したがその日のうちに退院したという。

    これに対して青木伸一水陸起動団長は「痛恨の極み,前原傑2等陸曹のご冥福を心からお祈り申し上げる。今後とも訓練の安全管理に万全を期す」とコメントを出した。本当に「安全管理」に万全を期すなら,この事故を医学的にもしっかりレビューすべきであると考え,「今後このような事故が起こらないように分析検討し将来に役立てることが望まれる」と防衛省に要望を出した。しかし,防衛省からは,この事故は訓練中ではなく民間移送車による移送中の事故で,「フィリピンで適切な医療を受けたので先生の出番はない」との返事があり,詳細を聞くことはできなかった1)

    この件に関する12月4日の高橋憲一防衛事務次官との会話の内容も含め,この件に関して課題を検討し提言する。

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