(青森県 W)
【血清セルロプラスミン・尿中銅などの測定で正しく診断し,治療薬で速やかに身体から銅を排除すれば予後良好】
ウィルソン病は常染色体劣性遺伝形式により遺伝する先天性銅代謝異常症です。その原因は,ATP7Bの変異による肝細胞内の銅輸送体であるATP7Bの機能低下による胆汁中への銅排泄障害です。そのため体内に銅が蓄積します。銅の沈着により肝臓や中枢神経を含む様々な臓器に障害が生じます。
診断には,肝障害や錐体外路症状を有する症例においては,血清セルロプラスミンを測定することが重要です。これが低値を示した場合はウィルソン病を疑います。ただ軽度のセルロプラスミンの低下は健常人や片方の遺伝子のみに異常のある人にもみられます。重要なことは,次に尿中銅排泄量を調べることです。外来では尿中の銅とクレアチニンを測定してその比を調べます。Kayser- Fleischer角膜輪の確認も重要です。
これらで異常を認めた場合,さらなる検索のために専門医への紹介をお勧めします。肝生検や遺伝子検索等にて診断します。血清セルロプラスミンが正常で銅過剰のためウィルソン病と診断されている患者の中には,特発性銅中毒症(idiopathic copper toxicosis:ICT)の患者が含まれている可能性があり,注意が必要です。
治療は,通常はD-ペニシラミンやトリエンチンなどのキレート剤で身体から銅を排除しますが,安定した患者では酢酸亜鉛で治療します。正しく診断され,適切な治療を受けた場合の予後は良好です。ただし,診断の遅れた症例や治療を中断したような症例(怠薬)では予後は不良です。一部の患者は肝移植を必要とします。
血清Ⅳ型コラーゲンやヒアルロン酸の検査の解釈は,通常の慢性肝疾患と同様です。通常に肝線維化の程度を反映します。
とにかく本症を思い浮かべることが最も重要です。
【回答者】
原田 大 産業医科大学第3内科学教授