近未来の小児科医は、今よりもっと子どもに寄り添う医師になっているはずである。
昨年12月8日、小児科医の25年にわたる願いであった「小児保健法」が「成育基本法」と名前を変え、国会で可決された。「成育基本法」とは胎児期から新生児期、幼児期、学童期、思春期を経て、次世代を育成する成人期までに至る「人のライフサイクル」の過程に生じるさまざまな健康問題を包括的にとらえ、これに適切に対応するための法律と位置づけられている。具体的には、国の機関として「成育医療等協議会」を設置し、法定の計画として「成育基本計画」を策定するという枠組みを定めたものである。
「成育基本法」施行後のわが国にあっては、妊娠・出産・子育てへの継続的支援のための拠点となる「日本版ネウボラ」が小学校の通学区域に1カ所ずつ設置されている。「ネウボラ」とは、フィンランド語で「アドバイスを受ける場所」である。フィンランドのネウボラ活動は、1920年、小児科医によってスタートした。開始当初の1920年代は乳幼児の疾病対策が主な目的であったが、最近では母子保健の充実に加えて、仕事と子育ての両立を目指した社会環境をつくり、出生率向上にも大きく寄与している。
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