【質問者】
國島広之 聖マリアンナ医科大学感染症学講座教授/聖マリアンナ医科大学病院感染症センター長
【PPSV23の予防効果は一般的に5年と考えられている】
肺炎はわが国の死亡原因の第3位で,その中で肺炎球菌は主要な病原微生物です。肺炎球菌は,肺炎以外に菌血症や髄膜炎など侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:IPD)を引き起こします。特に1歳以下の乳幼児,高齢者,基礎疾患を有する者で罹患率・死亡率ともに高いので,これらの感染症を予防するためにワクチンが重要となります1)。
わが国では,2010年から小児に7価肺炎球菌結合型ワクチン(pneumococcal conjugate vaccine 7:PCV7)が導入され,2011年より多くの自治体で公費助成による接種が可能となりました。PCV7導入の結果,小児IPD症例が減少し2),2013年11月から13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の定期接種が開始されています。成人では,1980年代後半に23価肺炎球菌ワクチン(pneumococcal polysaccharide vaccine 23:PPSV23)が導入されたものの,認識は低く,2000年以降公費助成での接種可能な自治体が増えましたが,2013年時点で65歳以上の成人のPPSV23接種率は20%程度でした。そこで,2013年10月より65歳以上の成人を対象にPPSV23の定期接種事業が開始されています。
成人例においてPPSV23によるIPDの発症予防,死亡率抑制効果は知られていますが3),肺炎の予防効果に関して一定の見解を得ていませんでした。わが国は急激な高齢化社会を迎え,肺炎例の多くが80歳以上に発症するという特徴があります。このような実状をふまえ,わが国からPPSV23の全肺炎あるいは肺炎球菌性肺炎の予防効果に関する質の高いエビデンスがいくつか報告されるようになりました4)~6)。特に,高齢者介護施設の入所者,75歳以上の高齢者,慢性肺疾患を有する人,歩行困難者などでPPSV23接種が全肺炎および肺炎球菌性肺炎において予防効果を示しています4)5)。
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