日本学術会議は20日、小・中・高等学校で微生物と病原体の基礎的知識を扱う教育カリキュラムの充実を通じて、微生物学情報に対する国民レベルでのリテラシーの向上を訴える提言を公表した。
提言では、初等~高等学校の各教育課程における微生物・感染症関係の記述の欠乏を指摘。微生物学知識の不足によって、重篤な感染症の流行が起こった場合に不正確な報道やSNS上での不確実な情報の拡散を招き、「平常の社会活動に支障をきたすことが想定される」と憂慮を示している。また、微生物がエコシステム中で果たす還元者としての役割など、人類に与える恩恵にも触れ、微生物の多面的な意義を学べるカリキュラムの見直しを求めている。
例えば中学では、理科において、鏡検や培養を通じて環境中の微生物の存在を認識させ、ヒトと微生物の密接な関係を実証的に学ばせることが望ましいとしている。また、保健体育では、ワクチン接種を含む感染予防の必要性や重大な感染症の「流行」の概念についても理解を促すことを提案している。
大学医学部については、公衆衛生の講義内容が専門教員の少なさゆえに手薄になっている現状に触れつつ、感染症や食中毒の届出義務が完全履行されるよう、教育の徹底が必要であるとした。
微生物学教育を教える人材の充実に向けては、医学系、看護学系、薬学系、農学系などの大学における教員の確保と研究者の育成を課題に挙げている。