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便移植療法の最近の知見

No.4954 (2019年04月06日発行) P.46

石川 大 (順天堂大学消化器内科准教授)

永原章仁 (順天堂大学消化器内科教授)

登録日: 2019-04-03

最終更新日: 2019-04-02

【疾患に応じた,安全,有効かつ効率的なプロトコールの早期確立が望まれる】

近年,腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)と様々な疾患との関連が明らかになってきている。そこで新たな治療戦略として,腸内環境の改善を目的とした便移植療法(FMT)が世界各地で,様々な疾患を対象に行われるようになってきた。

難治性Clostridium difficile感染性腸炎に対するFMTのランダム化比較試験(RCT)でその高い治療効果が証明され,最近の文献では,凍結便と新鮮便でのFMTは有意差なく効果があることが証明され,カプセル内服FMTも十分な治療効果が得られることも明らかになってきている。

潰瘍性大腸炎(UC)に関しては,2017年に報告されたRCT1)でUCに対するFMTの有効性は証明されたものの,凍結ドナー便を40回自己浣腸するという煩雑さや不確実性が懸念される方法であり,今後のスタンダード治療になりえるか難しい印象であった。筆者らも,UCに対して抗菌薬療法をFMT前に行い,大腸内視鏡下で新鮮便を投与する抗菌薬併用療法(A-FMT)の有効性や腸内細菌叢の変化について報告してきた2)。患者側の腸内細菌叢をリセットすることにより効果的な移植の可能性が示され,臨床研究は継続中である。FMTの治療効果のメカニズムを追究することは疾患の病因を明らかにすることになり,疾患に応じた安全で有効,かつ効率的なFMTプロトコールの早期確立が望まれている。

【文献】

1) Paramsothy S, et al:Lancet. 2017;389(10075): 1218-28.

2) Ishikawa D, et al:Inflamm Bowel Dis. 2017;23 (1):116-25.

【解説】

石川 大*1,永原章仁*2  順天堂大学消化器内科 *1准教授 *2教授

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