日本ワクチン学会は、今年1月、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関する提言」を出し、ワクチンの有効性・安全性を慎重に評価する必要性を強調した。安全にCOVID-19ワクチンの接種を進めるにはどうしたらよいのか。同学会理事長の岡田賢司氏に聞いた。(取材は2月12日に実施)
新型コロナウイルスワクチンに関しては期待が高まる一方で、その有効性・安全性についてはまだ不明な点も多いからです。
既にファイザー社、モデルナ社のmRNAワクチン、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンの第3相試験で短期間の有効性が報告されていますが、1年以上経過した時の免疫原性・有効性は不明です。海外では、接種開始後、既存のインフルエンザワクチンなどよりも高頻度でアナフィラキシー反応が報告されており、その因果関係の有無についても解明されるべきです。
また、ワクチンによって得られる免疫応答は常に有益なものとは限りません。フィリピンでは、デング熱の生ワクチン接種後に、抗体陰性者がⅡ型デングウイルスに感染して抗体依存性感染増強(ADE)が起こり、重症化率が高まったことが報告されています。
COVID-19ワクチンについては多くの国々で政治が前のめりになって、早期承認と早期接種を進めています。ワクチンが政治の道具に使われるのは、ワクチンを専門にする学会としては本意ではありません。科学的なデータを基に有効性・安全性を評価したものを社会に出していくべきだという思いがあります。