私は長野県の市中病院で研修医として医師人生を開始した。在宅医療に取り組みたいと考えてのことだった。もう20年以上も前のことである。卒後すぐに大学の医局に所属するのが当然の時代に市中病院での初期研修を選択するのは少数派だった。しかも介護保険も始まっていない当時に在宅医療を志すのは相当珍しかっただろうと思う。幸い在宅医療を含め多くの経験を積むことができ、自分の医師としての土台となっている。
初期研修医時代に出会った患者は忘れられない。30代の男性で、私が当直している日に救急外来を受診したのである。主訴は頭痛と発熱。病歴や診察所見から急性髄膜炎を疑って髄液検査を行い無菌性髄膜炎と診断した。指導医とともに入院管理が必要と判断したものの東南アジア出身で日本語は片言、英語は通じずという状況。必死に単語を並べて何とか理解してもらい入院することとなった。
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