筆者は現在、湘南鎌倉総合病院にて総合内科を担当しているが、以前は血液内科医として診療にあたっていた。多発性骨髄腫、急性白血病、悪性リンパ腫など多くの血液疾患の治療に携わらせて頂いたが、最近の血液疾患の治療の進歩については目を見張るものがあり生命予後も著しく伸びた。
本稿でご紹介するのは60歳代女性で、まだボルテゾミブやレナリドミドといった新規薬剤が発売される以前に多発性骨髄腫と診断された方である。圧迫骨折や貧血があり、当院に紹介を受けた。
当時、骨髄検査はまだ胸骨からも行われていた。腸骨は、高齢者では脂肪髄で低形成のため正しく診断しにくいこともあり、骨髄生検をしない場合には胸骨からの骨髄検査が選択された。この患者さんも胸骨から骨髄検査を行った。形質細胞が10%以上を占め、M蛋白の存在と合わせて症候性多発性骨髄腫と診断された。当時は初回治療として大量デキサメタゾン療法が選択され、治療は奏効したものの治療の選択肢は限られていた。経過中に新規薬剤が発売され、試すことができるようになっていった。
残り466文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する