介護施設や障害者施設への通所が必要な方に対して、送迎サービスが行われます。しかし、送迎中に事故が生じることがあり、利用者への安全確保も課題になっています。
2006年に改正された道路運送法では、施設や介護事業所が行う送迎については自家輸送扱いとすることになっており、一種免許があれば運転が可能です。すなわち、送迎に使用する車両は自家用車として扱われます。
デイサービスなど通所サービスを利用する際に、施設の方が送迎して下さることが一般的になっています。介護保険法において、通所系サービスにおける送迎業務は基本報酬に含まれています。
2024年に介護報酬が改正され、一部のサービス利用に対して送迎加算が算定されるようになりました。
介護保険法では、短期入所介護、短期入所療養介護、介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護については、利用者の自宅と事業所間の送迎について加算されます。
障害者総合支援法では、就労継続支援A型、B型、生活介護、放課後等デイサービス、児童発達支援などのサービスで送迎加算が認められます。加算の詳細についてはサービスごとに定められていますが、事業所の従業員が送迎することが条件となっています。
介護サービスでの送迎は、事業所の職員が担っているのが実状です。すなわち、普通自動車の運転免許を所持している職員が利用者を迎えに行き、事業所でサービス業務に従事し、さらに利用者を送り届けています。
以前、送迎サービスを行っている団体を対象にした調査では、送迎を担当する運転者が所持する資格として、普通自動車免許(第一種)のみが36%、その他の資格保持者が64%でした。その他の資格として最も多かったのがホームヘルパー2級で、普通自動車二種免許、介護福祉士と続きました。調査対象の団体に対して、過去1年間に送迎中の事故があったかを確認したところ、23%が「あり」と回答しており、対物事故が多くを占めていました。
たとえば、車椅子のまま福祉車両に乗車する場合を考えます。車椅子を乗車させる際に、利用者が車椅子から転倒しないように注意を払う必要があります。そして、車椅子が車内で動かないように、しゃがんで車内の床と車椅子を固定しなければなりません。その後、車椅子利用者に対してシートベルトを着用します。このように、出発前と到着後における身体的負担は大きいです。
また、運転中は事故を予防するために集中力を維持する必要があります。さらに、認知症の方などは、乗車中にシートベルトを外してしまうこともあります。一方で、重症心身障害児の場合には、車椅子に医療機器(人工呼吸器や吸引器)を搭載していることがあります。このような場合には、構造上、シートベルトを着用することが困難です。したがって、急な加速や減速でも傷害を負う可能性が高く、さらに運転者の緊張感は高まります。
介護サービスの送迎は、利用者の生命を預かる重要な業務です。送迎中の事故予防対策として運転者の身体的および精神的負担を軽減する抜本的な対策が必要ではないでしょうか。