外国人患者の増加を受けて、「医療提供の国際化―課題と工夫」をテーマとするシンポジウムが17日、都内で開かれた。国立国際医療研究センターで医療コーディネーターを務める看護師の堀成美氏が、外国人診療に取り組む医療機関側の姿勢について「(コストや対応の)負担を最小限にする工夫が必要だ」と強調した。
シンポジウムは日本病院会と日本経営協会が主催する国際モダンホスピタルショウ2019で行われた。
堀氏は、「あれも、これも、と業務を増やすと現場が疲弊し、医療事故につながる可能性もある」と危機感を表明。現在提供している医療体制をなるべく崩さずに、訴訟対策や医療事故対策など、講じる必要のある対策を絞るべきだとの考えを示した。
堀氏はまた、未収金発生防止策として実施している自院の取り組みを紹介。ホームページで支払い方法やルールを公開する、受付時に個人情報・クレジットカードの情報を確認する、診療前に概算額の支払いを要求する―などを挙げた。概算額については、国立国際医療研究センター病院のホームページで公表している、DPCデータに基づいて計算した「入院した際の医療費の概算例」(http://www.hosp.ncgm.go.jp/inpatient/070/index.html)の活用を呼び掛けた。
文化・宗教面への配慮と対応のあり方について講演した聖路加国際病院患者サービス課の原茂順一氏は、「多文化共生・他宗教への配慮は絶対的に達成しなければならないものではなく、お互いの文化・宗教間での“最大公約数”を導き出す作業だ」と指摘。満足いくサービス提供を行うためには価値観への配慮は必要だが、医療者の第一義的課題は「安全な医療の提供」と強調した。その上で、近年の中国を中心としたアジア人患者激増から見えてきた実態として、「欧米以外の多くの人々は自身をマイノリティと認識しており、価値観の相違に立腹することは稀。トラブル事例のみが強調されるが、ほとんどは容認されている」との見解を述べた。
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