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医療機関がIT導入で活用できる公的補助─経産省の補助金は最大450万円【まとめてみました】

No.4971 (2019年08月03日発行) P.10

登録日: 2019-08-01

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政府が推進する医療分野のICT活用で普及の大きなハードルとなっているのが導入費用の問題だ。診療報酬の抑制や人件費の高騰で医療機関の経営は厳しい状況が続き、現場はデジタル化の必要性や有用性は理解していても、大きな投資には慎重にならざるを得ない状況にある。しかし医療機関も対象となる公的補助を使えば、負担は大きく軽減できる。経済産業省が実施するIT導入補助金を中心に、医療機関がITツールを導入する際に活用できる公的補助について紹介する。

経産省が実施するIT導入補助金は、飲食や宿泊、小売、建設など幅広い業種の中小企業・小規模事業者が「生産性向上」に役立つITツールを購入する際に、その経費の1/2までを国が補助する制度(図1)。2017年度補正予算で初めて実施された。

医療機関も申請可能で、レセプトコンピュータや電子カルテ、予約管理システムなどが主な対象となる。19年度は最大450万円まで補助額が引き上げられた。第二次公募期間が8月23日(金)までとなっており、締め切り間近だ。

ITベンダーと協力しながら申請

申請と交付の仕組みは図2の通り。事務局は経産省から委託された一般社団法人サービスデザイン推進協議会が運営する。

IT導入補助金の特徴は、経産省の管轄事業のためIT産業の振興という側面を持っている点。医療法人などの中小事業者(申請者)は、補助金の対象となるITツールを販売するベンダー(IT導入支援事業者)と協力しながら、申請を行う必要がある。

申請は、補助金のウェブサイト(https://www.it-hojo.jp/)でパートナーとなるITベンダーを登録リストから検索し、ベンダーと相談の上、導入するITツールを選定するところから始まる。ベンダーとの契約はこの段階では必要ない。

次にベンダーから招待を受けたURLにアクセスし、登録画面に基本情報を入力、申請マイページを開設する。申請者が入力する主な基本情報は①代表者や所在地などの事業者の基礎情報、②従業員数や年間の平均労働時間、売上や利益などの財務情報、③経営ビジョンや状況などの非財務情報、④生産性計画─の4つ。③の非財務情報は選択式のアンケートなので回答しやすい。

対象は業務パッケージなどのソフトウェア

補助の対象となるITツール(図3)はソフトウェアに加え、ソフトウェアの拡張機能などの「オプション」、ソフトウェアの導入コンサルティング費などが該当する「役務」も含まれる。

ソフトウェアは、①勤怠管理や在庫管理などの業務パッケージソフト、②RPAなどの効率化パッケージソフト、③グループウェアなどの汎用パッケージソフト─に3分類され、さらに機能によって10のプロセスに細分化されている。

A類型(補助額40万円以上150万円未満)では「①~⑩のプロセス(青枠)から計2つ以上かつ①~⑧(赤枠)から1つ以上」、補助額の大きいB類型(同150万円以上450万円以下)では「①~⑩から計5つ以上かつ①~⑧から3つ以上」のプロセスをまとめて導入することが条件となる。

採択のポイントはクラウド型製品の選定

医療機関における補助金採択のポイントは、公募要項で定められた5つの加点項目のうち、①クラウド型製品の選定、②「おもてなし規格認証2019」の取得─をクリアすることだ。クラウド型製品の選定は、クラウドサービスへの移行を推進する経産省の方針に基づき今年度から新設された項目。おもてなし規格認証は、サービス品質を「見える化」するための規格認証制度として経産省が創設した制度で、最も簡便な「紅認証」はウェブ上のアンケートに回答すると無料ですぐに登録できる。

事務局のサービスデザイン推進協議会によれば、ITツールの選定で重要なのは、自院の改善すべき業務プロセスや課題と、導入しようとしているITツールのマッチングだ。例えば、「人手が足りない」という課題に対し、営業支援をメインにしたITツールを選定しているケースなども散見されるという。「生産性向上につながる支援」という補助金の趣旨を理解した上で、どのような機能を搭載したITツールを選定するかがポイントとなる。

今年度のIT導入補助金は間もなく応募が締め切られるが、補助金は来年度以降も継続される可能性が高い。また今年度は応募が多く、過去2年に比べ採択率が厳しい状況にある。今から信頼できるITベンダーを探し、じっくりと自院の課題を抽出するなど入念な準備をして来年度に備えるという手もある。

電子カルテ標準化に150億円

医療機関向けの公的補助として新たに設立されるのが、政府が2019年度予算で300億円を計上した「医療情報支援基金」だ。2021年から開始予定の被保険者証のオンライン資格確認と電子カルテの標準化に向けたシステム整備の支援にそれぞれ150億円ずつが振り分けられる。医療機関の申請・交付にかかる窓口は社会保険診療報酬支払基金が請け負う。

オンライン資格確認は、患者の受診時などに、医療機関が被保険者証の資格切れの有無をリアルタイムで確認できる仕組み。医療機関はカードリーダーの設置を含むレセプトシステムなどの改修が必要になる。
電子カルテについては、国が指定する標準規格を用いて相互に連携可能な電子カルテシステムを医療機関が導入した場合、その初期費用を補助する。電子カルテの導入支援に150億円が活用されるため、多くの医療機関にとって採択のチャンスがある補助金となりそうだ。

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