健康保険組合連合会(健保連)が全国の健保組合のレセプトデータを分析した結果を基に2020年度診療報酬改定に向けた政策提言を発表したことに対し、日本医師会の松本吉郎常任理事は8月28日の会見で「医療費削減ありきの分析であり、保険者として被保険者の健康の向上・維持への配慮が全くみられないことに大変失望している」と述べた。
健保連は8月23日、20年度改定に向け、①初診料の「機能強化加算」の算定対象を継続的管理が必要な患者に限るなど見直しを行う、②花粉症治療薬のうち市販品類似薬の保険給付範囲を制限するか自己負担率を引き上げる―など5項目を提言した。
会見で松本氏は、健保連の提言に対し「レセプトは診療報酬請求書にすぎず、患者の状態を踏まえた診療行為の分析に耐えうるものではない」と反論。
機能強化加算については「かかりつけ医機能を強化した医療機関の体制を評価するもの」と説明し、24時間対応や在宅医療に必要な人材の確保などにかかる経費を賄い、外来機能の分化を進める上では広く算定できることに意義があるとの考えを示した。市販品類似薬の保険給付範囲の制限に関しては、患者の受診抑制につながり、経済格差が健康格差に直結する事態を招く恐れがあると指摘した。
なお健保連の提言発表後、一部メディアは厚生労働省が市販品類似薬の自己負担増などの検討に入ったと報じたが、28日の中央社会保険医療協議会総会で保険局の宮崎敦文総務課長は「(そのようなことを)検討している事実はない」と否定している。
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