日本医師会の横倉義武会長は10月2日、地域医療構想の実現に向けて厚生労働省が、必要な医療機能や病床数を再検証するよう求めた公立・公的医療機関等のリストを公表したことについて、「地域医療構想調整会議で地域の実情を踏まえながら議論を尽くすことが重要」との考えを示した。
地域医療構想を巡っては、すべての団塊世代が後期高齢者となる2025年を見据え、ダウンサイジングや機能連携・分化を含む再編統合も視野に、各医療機関が担う医療機能や病床数の見直しが求められている。こうした中、厚労省は9月26日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で、再検証の要請対象として全国の424公立・公的医療機関等を公表した(詳細は厚労省ホームページ)。
対象となるのは、「A:がん・心疾患・脳卒中・救急・小児・周産期・災害・僻地・研修・派遣機能のすべての領域で『診療実績が特に少ない』とされた医療機関」「B:がん・心疾患・脳卒中・救急・小児・周産期のすべての領域で『類似かつ近接』とされた医療機関」。
横倉氏は2日の会見で「再編・統合という言葉が先走り、大きな混乱が生じている地域もある」と危機感を表明。「再検証の要請対象医療機関リストは、調整会議の議論を活性化するための資料だ」として、統廃合やダウンサイジング、機能分化などの方向性が機械的に決まるわけではないことを強調した。その上で、公立・公的医療機関等の役割が民間医療機関では担えないものに重点化されているかを再検証するよう求めた。
公表されたリストに医師会病院が含まれていることについては医師会病院が果たしている役割について、調整会議で主張する必要性を指摘した。
WGの構成員を務める中川俊男副会長は、リスト公表に関して26日のWGで確認していることとして、①全国の調整会議を機能として活性化させるものであり、議論の方向性を限定するものではない、②再検証の要請対象医療機関とされた病院以外が調整会議の議論において、ダウンサイジングや機能の分化・連携、集約化が要請されることもありうる、③公立・公的医療機関等と一括りにされているが、開設主体ごとに公費の投入状況や税制優遇措置の差が大きいということを踏まえた上で、調整会議が地域の実情を勘案して最終的な方向性を決定する―と報告。「具体的対応方針の変更を前提に要請したものではないということも確認している」と説明した。中川氏は、「機械的にリスト化したものであるからこそ、調整会議では、地域の実情を堂々と主張してほしい」と強調した。