日本臨床整形外科学会は12月1日、「医業類似行為に関する広告の現状」についてシンポジウムを開催した。法令による広告規制を求める声が、複数の演者からあがった。
あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復といった医業類似行為の広告を巡ってはそれぞれ、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法」「柔道整復師法」によって規定されているが、不適切な広告が後を絶たない。そのため、昨年5月に設置された厚生労働省の検討会では、不適切な広告を是正するためのガイドライン策定に向け、議論が進んでいる。
講演した健康保険組合連合会の三宅泰介氏は保険者の立場から、国民皆保険制度の存続が危ぶまれる中、「療養費の適正化が重点課題のひとつ」だと説明。「健康保険取扱い」と表記し、施術がすべて保険(療養費)適用だと誤認を招く広告や、「診」「治療」といった文言・施術所名を用いて医療に見せかけている広告など、違法広告が氾濫していることを問題視した上で、「審査の現場では、違法看板広告で利用者が誘引され、付け増し請求、架空請求等が多発している事実がある」と強調した。
シンポでは、日本医師会の釜萢敏常任理事も講演した。釜萢氏は、改正医療法に基づく医療機関の広告規制(2018年6月施行)に至るまでの経緯を踏まえ、あはき法や柔整法改正による規制の必要性を指摘。「ガイドライン策定後はなるべく早い時期に見直し、状況が変わらなければ法改正を強く厚労省に促し、その方向に持っていかなければならない」との考えを示した。
法規制については、医事法学の立場から登壇した九州保健福祉大の前田和彦氏も、療養費の適正請求や医療安全確立の観点から重要だと指摘。「不正、違法の範囲の広告は、罰則規定を置くくらいのつもりでいないとなくならない」と述べた。特にインターネットの広告は「無法地帯」だとして、取扱いをガイドラインに掲載すべきだとした。
前田氏は医業類似行為について、「資格内容については、明治期から現在に至るまで法制化されてきたにも関わらず、業務範囲と無資格者との差異は、その時々の行政解釈等に依るところが現状」だと説明。「医業類似行為とは何かという解釈も明確となっていない」と述べた。その上で、医業だけでなく医業類似行為者と無資格者を差別化しつつ、無資格者への規制も必要だとした。