インフルエンザはインフルエンザウイルスによる急性気道感染症であり,高熱,悪寒戦慄などの全身症状を特徴とする。近年の主な流行株はインフルエンザA型(H1N1pdm 09亜型,H3N2亜型),B型(山形系統,ビクトリア系統)である。急性脳症,重症肺炎・鋳型気管支炎,心筋炎をはじめ,罹患後に細菌感染症を合併することがある。
流行期に典型的な症状を認めれば,臨床診断が可能である。非典型例や季節外の疑わしい例については,迅速診断検査が有用である。
流行期に先立ち,インフルエンザワクチン接種を推奨する。
季節性インフルエンザ発症48時間以内の抗インフルエンザ薬投与により,有熱期間の短縮が得られること,重症例において症状軽減が得られること,が示されている。その一方で,軽症例の治療で入院や肺炎・中耳炎などの合併症を予防可能とするエビデンスには乏しく,また,投与に伴う副作用として,嘔吐なども少なくない。救急外来がインフルエンザ診療で圧迫され,本来の機能を果たせなくなることも問題であり,診療においては優先順位をつけることも検討される。治療対象については,日本小児科学会より下記の方針が示されている。
・幼児や基礎疾患があり,インフルエンザの重症化リスクが高い患者や呼吸器症状が強い患者には投与が推奨される
・発症後48時間以内の使用が原則であるが,重症化のリスクが高く症状が遷延する場合は発症後48時間以上経過していても投与を考慮する
・基礎疾患を有さない患者であっても,症状出現から48時間以内にインフルエンザと診断された場合は各医師の判断で投与を考慮する
・一方で,多くは自然軽快する疾患でもあり,抗インフルエンザ薬の投与は必須ではない
なお,抗インフルエンザ薬使用にあたっては以下の注意点に留意する必要がある。
・インフルエンザに罹患した小児の一部に異常行動が認められることが従来知られている。オセルタミビル投与との関連が懸念されたため,かつては10歳代小児には原則投与禁忌であった。その後は抗インフルエンザ薬との因果関係は明らかでないことが確認され,現在では投与の有無・種類にかかわらず注意深い観察が推奨されている
・吸入薬であるラニナミビルやザナミビルの使用により,気道過敏性のある患者において気管支攣縮をきたす可能性がある。それぞれ,夾雑物として乳蛋白を含む乳糖水和物を使用しており,乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者に投与した際にアナフィラキシーが現れたとの報告があり,投与に際しては十分に注意する
・吸入薬は5歳以降で使用可能とされているが,投与失敗例も少なくない。特にラニナミビルは単回吸入にて治療が終了するため,確実な吸入が求められる。小児については,医療従事者や保護者が吸入を確認するなど,服薬指導が必要である
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