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AIとの共存?[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.22

西村理明 (東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授 )

登録日: 2020-01-02

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昨今の、1型糖尿病を取り巻く先進医療機器の進歩には、目を見張るものがある。特に秀逸なのが、インスリンポンプである。一部のインスリンポンプでは、皮下のブドウ糖濃度を測定し、低血糖を起こす可能性をAIが予測してインスリン注入を停止し、低血糖を回避する機能を持つ。自動車でいうところのさながら自動ブレーキである。さらに進歩した機器(高血糖時にインスリンの注入量を自動で増やす)の使用は、既にアメリカで許可されており、そう遠くない将来、日本でも使用可能となる予定である。膵臓移植のライバルとなりうる治療が、実用化されているのである。

先日、日本に短期間滞在する1型糖尿病のアメリカ人で、この先進機器を利用している方を外来で拝見する機会があった。彼女が印刷してくるレポートをみると、ものの見事に(完璧ではないが)血糖値がコントロールされている。24時間のうち、血糖値が70~180mg/dLの間を推移する時間は70%を超え、HbA1cは7%前半を推移している。正直申し上げて、日本で使用できるインスリンポンプを使用して、同様のコントロールを達成することは不可能で、これは超人技としか思えない。ここはAIの前に完敗を認めざるをえない。しかしながら、自動運転の車が大多数となっても、その車を運転できる人には、自動運転が故障した際に対応できる、という資格が要求されるであろう。この優れたAIを使用したインスリンポンプしか使用したことがない患者さんを、外来でフォローするということは、機器が故障する可能性を考えるときわめて危険である。つまり、ポンプが故障したとき、普通のペン型インスリンによるインスリン療法が行える、または、インスリンポンプをマニュアルモードで操作できなければならない。しかしながら、その指導を行える医師は少数しかおらず、未来永劫、必要とされるのである。また、この先進機器を人生のどのタイミングで利用するのか、妊娠・出産の前後のみにするのか、就職時に使用するのか、それとも常に使用するのかをアドバイスできる医師も必要である。

AIに仕事を奪われると恐れるのではなく、AIとうまく共存するための方策を示すことができる医師のニーズが高まるのではなかろうか。

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