1年前まで、龍谷大学大学院の実践真宗学研究科で10年間、仏教者になる予定の学生、院生と「医療と仏教の協働」を主なテーマにしてスタッフとして取り組みました。臨床宗教師の教育課程の創設なども経験してきました。
一方、大分大学の非常勤講師として「健康科学概論」の一コマを医学部の医学科100名、看護学科80名の新入学者にさせて頂き、約10年ぐらいになります。私は「人間の苦悩をどう救うか」という講題で医療と仏教の協力の大切さを講義してきました。
昨年の講義の後、担当者が「学生の感想文を読まれますか」と言われたので、是非読ませてください、ということになり、後日感想文を読みました。改めて認識したことは、学生の9割以上が「初めて仏教の話を聞きました」ということです。そして「医療と仏教が『生老病死の四苦』を共通の課題にしていることを初めて知りました」という感想です。
龍谷大学でも将来、僧侶になる学生の多くが、医療と仏教が生老病死の四苦を共通の課題にしていることを初めて知りました、という感想を言われます。
私は仏教の勉強する機会は、九州大学の仏教青年会の寮に入寮してからでした。九大仏青は診療所を持ち、種々のボランティア活動をして、その加勢をする学生は部屋代が無料で、食費だけで生活できる寮が続いています。部屋代の無料に惹かれ入会して、医療と仏教の道を歩むことになりました。
30歳代初め、埼玉医科大学の哲学教授、秋月龍珉師の医学部生への講義の一節、「医療と仏教は生老病死の四苦を共通の課題にしているのです。仏教は2500年の歴史でその解決の道を見出しているのです。同じ課題に取り組む医療に携わる人は是非とも仏教的素養を持って欲しい」の言葉に触れて勇気づけられたことがありました。
平均寿命が天井に近づき、高齢社会、多死時代を迎え、老病死をどう受け止めるか。仏教の生死を超える道としての先人の文化の蓄積に学ぶことに時代の要請があると思うことしきりです。