札幌市で第46回日本小児臨床薬理学会学術集会(大会長坂田宏先生、2019年9月28~29日)が開催された。この学会は旭川医科大学(旭川医大)小児科学教室の初代教授吉岡一先生が中心となって発足した学会で、1974年8月に産声を上げた。先日、本学会に参加した。大会長の坂田宏先生は旭川医大2期生、小児科学教室の同門である。副会長のお一人の伊藤真也先生も同門であり、現在はトロント大学・トロント小児病院臨床薬理学部門教授である。私は1987年に小児科学教室に入局した。
私が新入医局員の頃、坂田先生が感染症グループで小児腸内細菌叢の研究を、伊藤先生が心臓グループで患者におけるジゴキシンやアスピリンの体内動態に関する研究を精力的にされていた姿を思い出した。このお二人の先生は吉岡教授が特に篤い信頼を寄せていたお弟子さんであったように思う。
1988年に吉岡教授は教授室で、私に対してウイルス研究を学位研究のテーマにすること、仙台医療センターウイルスセンターの沼崎義夫先生のもとに行き、臨床ウイルス学研究手法を学んでくるようおっしゃった。既にお二人の間で話は済んでおり、有ろう事か、吉岡教授は私の生活費の一部の面倒までもみて下さった。沼崎先生は私一人のために講義をして下さるなど丁寧に指導して下さり、JICA感染症対策プロジェクト長期専門家としてザンビアに行かれる際に私もご一緒させて頂いた。
吉岡先生や沼崎先生の指導を受けて早30年が経過した。現在、私は国立感染症研究所でウイルス研究に従事している。私は吉岡先生や沼崎先生をとても尊敬している。いつのことか正確に覚えていないが、吉岡教授が退官された後に私に「旭川医大小児科は巣立つ場所である」とおっしゃったことが忘れられない。現在の私はその言葉に応えられているのだろうか、自問自答している。
坂田宏先生は、学会開催を前に急逝された。臨床小児薬理学会の開催の成功は、坂田先生の奥様はじめ多くの方々のご努力の賜である。坂田先生のご冥福をお祈りするとともに、これまで多くのよき指導者に師事したことの有り難みをかみしめている。