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インテリゲンチア[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(284)]

No.4992 (2019年12月28日発行) P.66

仲野 徹

登録日: 2019-12-25

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東北大学の「世界トップクラスの研究者を招聘し、複数の学術イベントを通じて、人類社会の共通課題解決に貢献することを目的」とした組織「知のフォーラム」から、アドバイザリーメンバーの依頼を受けた。

軽い気持ちでお引き受けした。後でHPを見てみたら、メンバーにノーベル賞受賞者の小林誠先生や、沖縄科学技術大学院大学・学長のピーター・グル-ス先生などのお名前が。ひぇ~、荷が重いやんか。引き受けるんじゃなかったと思っても後の祭り。

緊張して委員会に臨んだが、えらくいい雰囲気で申請プログラムの審査がおこなわれて一安心。外国人3名、日本人4名の委員会なのだが、ものすごく突っ込んだ鋭い議論がなされて、本当に勉強になった。

委員会そのものも楽しかったのだが、ディナーなどでの歓談はそれ以上だった。外国人委員の先生達からは、日本はサイエンスにもっと研究費を出すべきだなどというありがたいご意見をちょうだいした。

驚いたのは、サイエンス以外のトピックスでの雑談だ。たとえば、人文科学について。グルース先生は、長年、ドイツのマックス・プランク学術振興協会の会長だった。マックス・プランク研究所というと理系の研究所という印象が強いのだが、85ある研究所のうち19もが人文科学関連らしい。なるほど、造詣が深いのも当然だ。

人文科学にはあまりはお金がかからないし、と笑いながらも、AIによる雇用喪失やSDGsといった、これから全世界が直面する問題の解決には人文科学も必要だという話になった。ごもっともである。

別のドイツ系の先生は、もう一つの重要課題、炭酸ガス削減を考えて、ヨーロッパ内では飛行機に乗らず鉄道を使っているという。さらに、アメリカでの国際学会へ行くのもできるだけ控えている、と。

久しぶりに、インテリゲンチアという言葉が頭に浮かんだ。AIによる雇用喪失、SDGs、そして地球温暖化。普段からこういったことを考え、行動に移せるのがインテリというものだろう。仕事や日常の雑事にかまけて、まともに考えたこともなかったのが恥ずかしくなった。

今さらですが、小さくとも努力をしていこうと思っている次第にございます。お前がインテリかと言われるとちょっとわかりませんが、まぁそこはまけといてください。

なかののつぶやき
「周囲に聞いてみたら、SDGs(Sustainable Developmental Goals、持続可能な開発目標)という言葉を知らない人が結構いてびっくり。あかんやないの。日本は、赤字国債の発行などで次の世代に大きな負債を負わせているし、未来の社会に対する責任を考えるという姿勢がちょっと足らないのかもしれませんねぇ。困ったもんです」

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