2015年から年1回「貧困と子どもの健康研究会」を開催している(同実行委員会・日本外来小児科学会子どもの貧困問題検討会、他共催)。阿部彩、山野良一、五十嵐隆、近藤克則、秋山千佳、金澤ますみ、アネリ・イヴァルソン、菅原ますみ、柳原透といった、この分野での内外の第一人者にシンポジウムや講演をお願いし、また、医師・養護教諭・ケースワーカー・保健師・事務職員などの現場からの報告が行われ、他分野の方や一般市民も含めた活発な討論が行われる。非常に内容の濃い研究会になっていると自負している。
それと同時に、この研究会で毎回注目されるのが、医学生など若い人たちの発表である。「今どきの医学生は貧困問題などに関心を持たないだろう」と思われがちだが、決してそうではない。
ある学生は、児童相談所での小児科医の診察に同行した経験を語ってくれた。そこにいる子どもたちは貧困・虐待など、壮絶な背景を持っているのに、見た目ではまったくわからない。しかし、その子たちと話をしてみると、発達の遅れに気づく。貧困は子どもの発達・健康・学力などに様々な悪影響を及ぼすが、なかなかそうとはわからない。「貧困に気づく上では、『何か変だな』という感覚を持つことが大事だ、と学んだ」と言う。それは、私が日々子どもの貧困に取り組む中で感じていることとまったく重なる。
他にも、ホームレス支援や子ども食堂などの現場に足を運び、そうした活動を行う方々へのインタビューを映像で呈示したり、同じ大学の学生を対象にwebアンケートを実施し、大学生自身が貧困を抱えている実態を明らかにしたり、それぞれが独自の切り口で取り組み、自分の言葉で率直な提起をしてくれる。参加者からは、「学生さんの発表を聞けただけでも、今日来た甲斐があった」といった感想が出される。私も、そういう姿を見ているだけで感動する。今年はどんな学生との出会いがあるだろうと、毎年楽しみにしているのである。