ここに2本のパターがある。ともにジョージ・ロウ(George Low Jr. 1912~1995)の名前を冠しており、うちスポーツマンはジャック・ニクラウスが使用し、メジャー・トーナメントの優勝18回のうち15回を、また世界中で78回の優勝を勝ち取ったときに使用していたものである。
このパターの歴史はいろいろの説があるのだが、私が確実と思うところだけを書いてみると、1960年代にハンスバーガー(Jim Hansberger)氏が当時パットの名手としてティーチングプロであったロウと契約し、彼の名前のパターをつくることに始まる。
最初スポーツマンを23本、スポーツマン部門(家庭の金物部門)で試作し、これらは大部分をジャック・ニクラウス、ベン・クレンショー、アーノルド・パーマーなど、ロウの教え子のプロに配り、現存するものは数本と言われている。これの評判が良かったので、プロショップ用であるブリストル部門に移して250本つくった。この2本では、重みとネックの形状が少し異なる。
1980年代になって、ウィザード600は評判が良いのにほとんど手に入らないと言うことで、ラム(Ram)社をM&Aしたハンスバーガー氏にレプリカをつくってくれ、という声が数多く起こった。なかなか同じ物ができなかったが、とうとうスポーツマン 198本、ブリストル 396本が作製された。これらはスポーツマン、ブリストルの刻印がオリジナルよりは打面(フェース)に近く、Lowの“W”の字が少しだけオリジナルとは異なっている。オリジナルと区別するためにわざと違えたのだと思うが、手元にある2本はいずれもレプリカではなく、オリジナルとわかる。
ロウの著書に『The master of putting,1986』というものがある。パッティングのコツを微に入り細をうがって書いているのだが、その要点は圧に敏感なパッチーニ小体は大部分母指と示指にあり、したがって、これをいかに使うかだと言う。また、バックスイングで静止を入れることが大切だという。男子プロは天才的な人ばかりと思うので参考にはならないが、女子プロのパッティングを見ていると、打ち急ぐ人は概してパットが下手なようだ。