地域医療振興協会は自治医科大学の1期生の義務年限が終了する1年前、すなわち、1986年に創設された。創設の経緯について直接、現協会理事長・吉新通康氏からお伺いしたわけではないが、自治医科大学の卒業生は9年間の義務年限終了後、県の職員でなくなり、今まで続けてきた地域医療を続けることができなくなる場合があることを想定し、そのような卒業生が集まって、自分たちで地域医療を続けるような仕組みをつくるためにこの協会を設立した、とのことである。
当時、石岡の病院が売りに出され、大学が保証人になって協会がお金を借りてその病院を購入したのが、協会の直営病院の第1号となった。石岡の病院は現在も協会が運営し、2008年に改築を終えたが、当時病院の所有者であった大久保氏と協会との間を私が取り持ったように記憶している。
その後の協会の発展には目覚ましいものがあることは、医療界全体が広く認めるところであり、現在76の病院、診療所、老健施設、看護学校などの運営に関与している。協会の初代会長は吉新現理事長、2代目が中尾喜久初代自治医科大学学長で、私は1997年6月から3代目の会長となり、その職を現在も続けさせて頂いている。
会長としての仕事は、新しく開院した病院や診療所の開院式でテープカットをしたりするくらいで、実質的なことは何も行わないが、定期的に開催される常務理事会に時間が許せる範囲で出席するようにしている。常務理事会に出席することによって、病院の運営には無知な私にも、協会に所属する病院、診療所などがお互いに助け合い、協会が一体となって所属施設の運営、ひいては地域医療の実践を行っている状況がよくうかがえる。
協会の施設で働く医師数は約1200名であるが、自治医科大学卒業生のみならず多くの他大学卒業生も加わっており、いずれも地域医療を実践しその発展に興味のある医師の集合体となっている。また、米国のThomas Jefferson大学、Oregon大学等と連携して会員のprimary careの教育を行っている。
上記の通り、この協会が、わが国が推進している地域包括ケアの充実に重要な役割を担っていると信じている。