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5年目に入った医療事故調査制度[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.7

山口 徹 (虎の門病院名誉院長)

登録日: 2020-01-01

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2015年から始まった医療事故調査制度も5年目に入った。この調査制度については、発足前のモデル事業の時代から関わっていたので、その発展を期待している者の一人である。4年を経ていろいろ評価されているが、最も予想と異なるとされているのは報告件数であろう。開始前には、医療事故情報収集等事業から推定された年間千数百例の報告があろうと予測されていたが、実際には1日ほぼ1件の報告に留まっている。この制度がまだ医療界で肯定的に受け入れられていない面があるのであろう。

報告数の話だけでも、2018年の医療事故調査制度での報告数は377例で、医療事故情報収集等事業での死亡報告件数356例とほぼ同じである。医療事故情報収集等事業に参加している病院数は約1000病院であり、すべての医療機関、すなわち8000余の病院と17万の診療所が対象の医療事故調査制度の報告数がほぼ同じということには、違和感がある。

医療事故情報収集等事業の報告範囲には、再発防止に資すると思われる事例も入っているが、基本的には誤った医療による死亡、予期しない死亡であり、今回の制度の対象「提供した医療に起因する予期しない死亡」と大きな違いはない。この報告数のずれを意識してか、厚生労働省から2019年の立入検査時の留意事項には、両報告の間に差がないかを確認すること、が挙げられている。

いわゆる大病院でも、4年間に報告数0の医療機関が40%を超える。報告すると説明することで家族に疑惑を誘発しかねない、事故という名前がよくない、報告するメリットがない、などなど、医療機関の懸念や負担もわからないわけではない。しかし、この制度は、医療法第3章「医療の安全の確保」に位置づけられた医療事故の再発防止をめざしたものであり、積極的には取り組まないと医療界は言えない。

当該医療の提供に関わった現場医療者の心情を尊重すれば、「死亡するとは予期していなかった」という事例が4年間に1件もない、ということは考え難い。「死亡するとは予期していなかった」と判断することが、「死亡すると予期していた」とする判断より不利になるとも思えない。医療行為が100%安全な行為ではないことを社会に理解してもらうためにも、積極的な報告を通じて医療界の再発防止に取り組む意欲を示したいものだ。

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