【前十字靱帯損傷は接地後約40msの間に膝外反内旋位で生じる】
膝前十字靱帯(ACL)損傷は,手術を要するスポーツ外傷で最も多い疾患である。膝ACL再建術の進歩に伴い良好な結果が得られるようになったが,スポーツ復帰にはいまだに長期間を要し,長期的には変形性膝関節症への進行を予防できないとの報告もある。そのため,膝ACL損傷に対する予防法の確立が望まれており,その受傷メカニズムの解明は,予防法を考える上では欠かせない大事な要素である。だが,その解析は手法や精度が限られており,受傷メカニズムの詳細はcontroversialであった。
近年,model-based image-matching法という3次元ビデオ解析法によって膝ACL損傷の受傷メカニズムの詳細が明らかにされた1)2)。膝ACL損傷は接地後約40msで生じ,膝外反,内旋および脛骨前方移動により断裂が生じていた。また,接地後膝ACL損傷時までの間,股関節は内旋位で固定,足部は踵接地後足底が地面に固定されており,股関節および足部によるエネルギー吸収が不十分となることが損傷に寄与していた。このことから予防プログラムは,膝関節と股関節の両方に対するアプローチおよび着地前のリスク予測に焦点を当てていくことが重要と考えられ,それに基づいた予防プログラムにより,実際に膝ACL損傷のリスクを有意に減らすことに成功している3)。
【文献】
1) Koga H, et al:Am J Sports Med. 2010;38(11): 2218-25.
2) Koga H, et al:Am J Sports Med. 2018;46(2): 333-40.
3) Omi Y, et al:Am J Sports Med. 2018;46(4):852-61.
【解説】
古賀英之 東京医科歯科大学運動器外科学准教授