今シーズンはインフルエンザの流行が早く始まっており、予防接種、感染予防、治療の波が現場に押し寄せています。妊娠中や産後2週間はインフルエンザが重症化しやすい状態であり、予防接種や積極的な抗インフルエンザ薬の投与が推奨されています。今回は、妊娠中や授乳中のインフルエンザ診療についてご紹介します。
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、すべての妊娠週数および授乳中に安全に接種できます。妊娠中のインフルエンザ予防接種は、入院リスクを40%下げると報告されています。ワクチン接種後も、授乳はいつも通り続けて大丈夫です。日本産科婦人科学会やCDC(Centers for Disease Control and Prevention、アメリカ疾病予防管理センター)では、妊娠中はインフルエンザの予防接種を積極的に打つよう推奨しています。
タミフルⓇ(一般名:オセルタミビル)・リレンザⓇ(同ザナミビル)・イナビルⓇ(同ラニナミビル)は使用歴が長く、妊娠中や授乳中でも胎児や乳幼児へ悪影響はないとする観察研究があります。抗インフルエンザ薬は非妊娠時と同じ用法用量で使用してください。ラピアクタⓇ (同ペラミビル)については、動物実験で流早産のリスクが指摘されており、必要時以外は使用しません。ゾフルーザⓇ(同バロキサビル マルボキシル)は妊産婦や授乳中の使用データが無く、積極的には使用しません(ラットの投与で胎盤通過性と乳汁移行性が認められている)。
子供がインフルエンザにかかってしまい母親が看病せざるを得ない状態は頻繁に発生します。妊婦への濃厚接触時の予防投与も、非妊娠時と同様にタミフルⓇおよびリレンザⓇを投与して問題ありません。
妊娠中の解熱剤はアセトアミノフェンが第一選択です。ただし、大量の投与で動脈管早期閉鎖関連症例やADHD(attention deficit-hyperactivity disorder)のリスク増加などを報告している研究もあるため、短期間に頓用で使用するようにします。NSAID(非ステロイド性鎮痛消炎剤)は、羊水過少等のリスクがあり妊娠後期は禁忌です。麻黄はエフェドリンを含んでおり胎盤血流の低下リスクがあるため妊婦への投与は注意が必要です。
国立成育医療研究センターの授乳と薬情報センターには「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」が一覧になっており便利です。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist.html
米国U.S. National Library of MedicineのLactMedには授乳中の薬についてデータベースから検索が可能です。
http://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/lactmed.htm
柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[産婦人科][インフルエンザ]